中国の選手がマスクで習政権に抗議をしたらどうなるか

同じように中国の習近平国家主席にも大坂のマスクについて聞いてみたい。一党独裁国家の中国では国民の自由や民主化を求める運動に対する厳しい弾圧を続けてきた。その最悪のケースが1989年の天安門事件だった。現在も香港において自由と民主化を求める市民を弾圧している。

習政権の傀儡かいらいに過ぎない香港政府が昨年4月、逃亡犯条例の改正案を議会に提出。これをきっかけに民主化を求める大規模な抗議デモが若者や学生の間で巻き起こった。溜まったマグマが噴き出すように香港市民の怒りが爆発した。昨年6月には参加者が香港史上最大規模の200万人にも膨れ上がるデモも行われた。

香港市民の抗議に対し、習近平政権は今年5月の全人代(中国の国会)で「国家安全法」を可決。即座に香港に導入して著名な活動家らを次々と逮捕するなど抗議運動を取り締まっている。

仮に中国の有名なスポーツ選手がマスクを着け、大坂なおみのように習近平政権の弾圧を批判したら、その選手は選手生命だけでなく、命も危なくなるに違いない。一党独裁という政治体制ほど怖いものはない。

だが、そんな中国にも怖いものはある。国際社会からの批判だ。欧米を中心とする国際世論が中国の共産党独裁体制を監視し、批判していくことが肝要だ。日本も国際社会の一員として協力を惜しんではならない。

なぜ日清食品の広告はナイキと比べられ、批判されたのか

全米オープンでの優勝後、大坂なおみはメディアの取材に「コート外の出来事が私を強く押してくれた」と語り、メディアも彼女の人種差別に対する抗議を大きく評価した。

たとえばアメリカのニューヨーク・タイムズ(電子版)は「社会正義を呼びかけながらタイトル獲得」との見出しを掲げ、「大坂はコートの内外で主張を訴えた」と報じた。イギリスのガーディアン(同)も「試合と同じくらい大坂は強力なメッセージを伝えた」と評価した。

また、大坂の出演する広告では、日清食品とナイキの演出がまるで違うとしてネット上で批判されている。日清食品の広告は大坂のかわいらしさやファッション性を強調したもので、人種差別に抗議するメッセージはない。一方、ナイキの広告は黒人差別への反対運動を連想させる社会的なインパクトのあるものだった。

いまや社会的メッセージを盛り込んだ広告は世界的常識である。日本のスポンサーはその点を自覚し、世界で認められる広告を出してほしい。