「通じ合えない孤独」に目を向けることで、嫉妬をかわす
嫉妬の電流を防ぐには、電流を流さないようにする「絶縁状態」が必要になります。「絶縁状態」と聞くと、ものすごい怒りが必要となるイメージがあり、「そんなことはできない」とあきらめてしまうかもしれませんね。でも、この「絶縁状態」は簡単にできます。単純に「相手と通じ合えない孤独」に注目を向ければいいのです。
通じ合えない感覚があるから、「なんとか通じ合えるようにしなければいけない」と思ってしまいます。でも、無理やり通じ合うように努力するのは、素手で電流が流れる鉄骨を触るようなもの。相手から流れてくるのは、愛情などの温かさではなくて嫉妬の電流で、その電流に「ビビビッ!」と感電していたわけです。
相手とわかり合いたい、自分だけがわかり合えている気がしない、と思って相手と無理に通じ合おうとするから、「ビビビッ!」と嫉妬の電流が流れてきて、おかしな言動をさせられます。すると、孤立感が増していき、ますます「通じ合えるようにならなければ」と努力しなければいけなくなるのです。
そこで、「通じ合えない喜び」に注目を向けてみると、「あ! 頭の中が静かになった!」となるのは、「通じ合えない孤独」が絶縁状態になって、相手からの嫉妬の電流を防いでくれているからです。
嫉妬のループから抜け出して、自分らしく働く
ある女性はとても優秀なのに、どの職場に行っても嫌がらせをされます。ちょっとでも上司から仕事ぶりを認められると、それを見ていた先輩から自分がやらなくてもいいような雑用を押しつけられます。そして、仕事量がキャパオーバーになり、ミスをするようになって、「もうここでは働けない!」という心境になります。
「嫉妬されているからこんな状態になるんだ!」と理解して、この状況から抜け出そうとするものの、「逃がすか!」と言わんばかりに、引き戻そうとする周囲の強烈な嫉妬の力が働きます。女性は「襲ってくる苦しみがきつい!」「自分はここから抜け出せないかもしれない」と絶望感でいっぱいになっていたのです。
そんなときに、「え? 『孤独』に注目を向ければいいの?」と、「絶縁体」のことを知ります。「孤独って悪いことだと思ったから、そこに注目しちゃいけないような気がしていた」とびっくり。
職場で「嫌な仕事を振られている」と思ったときに、「自分の孤独」に注目すると、「あ! 本当に不快な気分がなくなるかも!」と嬉しくなります。「失敗して怒られるかも?」と不安になって仕事でミスをしていたのに、「孤独」に注目を向けることで、頭の中が急に静かになります。
そして、自分にはこんなに集中力があったのか! と思うぐらい仕事に没頭して、簡単に仕事を片づけることができます。
「孤独」が絶縁体となって、嫉妬の電流を防いでくれて、自分らしく生きられるようになり、「これが本当の自分なんだ!」と、はじめて自分自身を感じられるようになっていきました。そう、孤独は悪いものじゃなくて、嫉妬の絶縁体となってくれる便利なもの。
嫉妬のループから抜け出してみると、本来の自分らしく生きられるようになります。
写真=iStock.com
アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックに勤務する傍ら、東京都精神医学総合研究所の研究生として、また嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室非常勤職員として依存症に関する対応を学ぶ。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長、株式会社アイエフエフ代表取締役を経て、現在、株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。短期療法のFAP(Free from Anxiety Program)療法を開発し多くの症例を治療している。