※本稿は、大嶋信頼『あなたの才能があなたを苦しめる』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
結果が出始めたら、なぜか協力してもらえなくなった…
・結婚が決まったら、女性の先輩から「もともと仕事は本気じゃないもんね」と嫌味を言われる
・ツイッターでフォロワーが少ないときには、良いコメントしかつかなかったのに、フォロワーが増えるにつれ、アンチが増えてきた
嫉妬は本当にやっかいです。とくに才能がある人は悪口を言われたり、足を引っ張られたりして、嫌な思いをしたことが多いかと思います。目に見える成果が出ていないときは、みんな応援してくれていたのに、うまくいき始めたとたん、協力してもらえなくなった、という経験がある方もいるでしょう。
これも実は嫉妬の作用の一種。読者の方からも、仕事がものすごくうまくいっていたのに、急に周囲の人から協力を得られなくなって、孤立してしまった、という声が多く聞かれました。私も、「これは楽しい! うまくいきそう!」というときにかぎって、周りから攻撃されてうまくいかない、という経験を何度もしてきました。
脳の神経細胞のせいで、相手が「嫉妬の発作」を起こす
私は、ずっと「調子に乗ったら悪いことが起きる」というのは迷信で、私の思い込みだと思おうとしていたのですが、それは間違いでした。カウンセリングの仕事をするようになって、私と同じように「うまくいったあと、必ず嫌なことが起きる」人がたくさんいることがわかってきたのです。
それまで全然勉強しなかった人が勉強するようになったら、急に周りがものすごくひどいことを言ってくる、というケースもありました。家族も本人が勉強ができるように願っていたのに、わけがわかりません。
聞いてみると、「周りの人が嫉妬の発作を起こして、破壊的な人格になっているんだ!」ということが見えてきます。
「自分よりも下の立場なのに、自分よりもおいしい思いをしている」という条件があると、脳内で電気が乱れて発作を起こします。「嫉妬の発作」の場合は、破壊的な人格に変身して、「嫉妬の対象になっている相手を破壊する」のが特徴です。そして、破壊的な人格になって、「ひどい言動」や「足を引っ張るようなこと」を意図せずにやってしまうのです。
こちらが「いいことがあった」ということを前面に出していないのに、なぜか相手に伝わってしまって相手が発作を起こします。
脳には「ミラーニューロン」という神経細胞があって、「相手の脳の状態をまねする」という性質があります。「話していないことがなぜか伝わってしまう」のは、脳内の「ミラーニューロン」の働きによって、無線LANのように「脳のネットワーク」で情報がやり取りされているからです。
嫉妬の電流には「感電しない工夫」が必要
嫉妬の攻撃は、もはや避けることはできないのでしょうか? ここでひとつ私の昔話を聞いてください。
学生時代に看板屋でアルバイトをしていて、天然ボケの先輩から「おう! 鉄骨を溶接するから、ちょっと押さえてくれ!」と頼まれたことがありました。鉄骨の溶接は、鉄骨に電極をつけることで、溶接棒を当てたときに大量の電気が流れて「バチバチバチ!」と溶接棒が熱で溶け、くっつく仕組みになっています。だから、鉄骨を素手で押さえたら感電してしまうのです。
それを知らなかった私は、「バチバチバチ!」という瞬間に素手で鉄骨を触ってしまい、「死んだかも!」というぐらいの痛みを味わいます。天然ボケの先輩は「ダメだよ! 大嶋君、ちゃんと電流を絶縁できる手袋をつけなきゃ!」と、痛みで悶絶している私に言います(先に言ってよ!)。
さて、ここで何が言いたいかというと、「絶縁体」の話です。世の中には電気を通すものと通さないものがあって、電気を通すのを防ぐ「絶縁体」が存在します。人間の場合は、電気を通してしまうから、「ビビビッ!」と感電してしまいます。つまり、感電しないためには、絶縁体である「ゴム手袋」をはめるような安全策が必要なわけです。
この話を思い出して、もしかしたら嫉妬の電流が流れてこないようにする「絶縁体」があるのかもしれない、と考えていました。そんなときに「あ! 『孤独』が嫉妬の電気を防ぐ絶縁体になるんだ!」ということに気がつきます。
「通じ合えない孤独」に目を向けることで、嫉妬をかわす
嫉妬の電流を防ぐには、電流を流さないようにする「絶縁状態」が必要になります。「絶縁状態」と聞くと、ものすごい怒りが必要となるイメージがあり、「そんなことはできない」とあきらめてしまうかもしれませんね。でも、この「絶縁状態」は簡単にできます。単純に「相手と通じ合えない孤独」に注目を向ければいいのです。
通じ合えない感覚があるから、「なんとか通じ合えるようにしなければいけない」と思ってしまいます。でも、無理やり通じ合うように努力するのは、素手で電流が流れる鉄骨を触るようなもの。相手から流れてくるのは、愛情などの温かさではなくて嫉妬の電流で、その電流に「ビビビッ!」と感電していたわけです。
相手とわかり合いたい、自分だけがわかり合えている気がしない、と思って相手と無理に通じ合おうとするから、「ビビビッ!」と嫉妬の電流が流れてきて、おかしな言動をさせられます。すると、孤立感が増していき、ますます「通じ合えるようにならなければ」と努力しなければいけなくなるのです。
そこで、「通じ合えない喜び」に注目を向けてみると、「あ! 頭の中が静かになった!」となるのは、「通じ合えない孤独」が絶縁状態になって、相手からの嫉妬の電流を防いでくれているからです。
嫉妬のループから抜け出して、自分らしく働く
ある女性はとても優秀なのに、どの職場に行っても嫌がらせをされます。ちょっとでも上司から仕事ぶりを認められると、それを見ていた先輩から自分がやらなくてもいいような雑用を押しつけられます。そして、仕事量がキャパオーバーになり、ミスをするようになって、「もうここでは働けない!」という心境になります。
「嫉妬されているからこんな状態になるんだ!」と理解して、この状況から抜け出そうとするものの、「逃がすか!」と言わんばかりに、引き戻そうとする周囲の強烈な嫉妬の力が働きます。女性は「襲ってくる苦しみがきつい!」「自分はここから抜け出せないかもしれない」と絶望感でいっぱいになっていたのです。
そんなときに、「え? 『孤独』に注目を向ければいいの?」と、「絶縁体」のことを知ります。「孤独って悪いことだと思ったから、そこに注目しちゃいけないような気がしていた」とびっくり。
職場で「嫌な仕事を振られている」と思ったときに、「自分の孤独」に注目すると、「あ! 本当に不快な気分がなくなるかも!」と嬉しくなります。「失敗して怒られるかも?」と不安になって仕事でミスをしていたのに、「孤独」に注目を向けることで、頭の中が急に静かになります。
そして、自分にはこんなに集中力があったのか! と思うぐらい仕事に没頭して、簡単に仕事を片づけることができます。
「孤独」が絶縁体となって、嫉妬の電流を防いでくれて、自分らしく生きられるようになり、「これが本当の自分なんだ!」と、はじめて自分自身を感じられるようになっていきました。そう、孤独は悪いものじゃなくて、嫉妬の絶縁体となってくれる便利なもの。
嫉妬のループから抜け出してみると、本来の自分らしく生きられるようになります。