マインドが激変した「第二の転機」とは
ある意味、仕事からの逃避先として始めた試験勉強だったが、いざ始めてみるとどんどん気持ちが前向きになっていった。自分が成長しているという実感が湧き、闘志をかきたてられる目標を見つけることができたのだ。
壁にぶつかった時、それに真正面から向き合うことで乗り越える人もいるが、本島さんは「逃避することでやり過ごしてきた」と笑う。この場合の「逃避」は、ただ逃げるのではなく、視野を変えて違う課題に集中するということ。そうするうちに本来の闘志にあふれた自分を取り戻し、前へ進んできたのだという。
結局、司法試験に合格することはかなわなかったが、学生時代より大きな手応えを感じた本島さん。勉強が楽しかったこともあり、もう一度挑戦しようと前を向いたところへ第二の転機が訪れた。
2004年、本島さんは新設されたCSR推進室の室長に抜擢される。またしても未経験の仕事だったが、闘志が戻りつつあったこと、会社に期待されていると感じたことから、試験勉強も中止して全力で仕事に取り組み始めた。
この時、抜擢してくれた上司からは「会社との心の距離をゼロにしろ」と言われたそう。それまでずっと、本島さんは会社との間に距離を感じ続けてきた。それは夫の転勤、未経験の部署への異動、期待されない自分、と都度挫折を味わい、自信をなくしてきたためでもある。
それが、今回の異動で一気にマインドが変わった。CSR推進は会社全体の姿勢に関わる仕事。上司の言う通り、仕事から心が離れているようでは務まらない。会社に対して、初めて当事者意識を持った瞬間だった。
「でも同時に、距離を感じていた頃の気持ちも忘れないでいようと決めました。私が感じていた距離感は、きっと多くの社員も感じているはずだからです。会社の方針を判断する上では、社員が実際にどう感じるか推測することも大事。今も必ず、会社と社員両方の視点で考えるようにしています」
大きな気づきを得た後、本島さんはグループ内のコンサルティング会社と生命保険会社に立て続けに出向。今度は初めて管理職になり、どうすれば営業目標を達成できるのか、どうすれば頼れる上司になれるのかと悩んだ。
しかし、前者は数字を見える化し、自分はバックアップに回って部下を盛り立てることで達成。後者は「出向してきたよそもの」という自分の立場に向き合い、部下の本音をありのまま受け止めることで、徐々に信頼を得られるようになった。
この2つのピンチを乗り越えたことで、本島さんは管理職として心がけるべきことがおぼろげながらわかるようになったという。ただ、どの異動先でも感じたのは「私には専門性がない」というコンプレックス。この悩みは責任が重くなるに連れて少しずつ大きくなっていた。