悩んだ末、専用サイトで購入!

ちなみに、私が注目した商品は、フィンランド生まれのインドアハーブガーデン「Plantui(プラントゥイ)6」【写真】。実は、店頭で説明を受けた日の夜、考え抜いた末、専用サイトから購入してしまいました。

筆者が注目し、購入したPlantui(プラントゥイ)6
筆者が注目し、購入したPlantui(プラントゥイ)6 写真提供=b8ta(ベータ)

私がとった行動は、マーケティングでいう「オムニチャネル」の流れ。すなわち、実店舗やECサイト、SNSなど複数のチャネル(流通経路)をシームレスに行き来して、「いつでもどこでも」目指す商品を購入できる……という環境によって実現した、購買行動です【図表1】。

オムニチャネルは、おもに2つの流れで形成されます。1つが「店に行く前に、事前にウェブ(含・SNS)で情報を調べてから行く」という、「ウェブルーミング」買い、もう1つがその逆、b8ta(ベータ)のような「実店舗→ウェブ」のショールーミング買いです。

複数のチャネルを行き来して購買に至る「オムニチャネル」

実は2011~13年ごろまで、ショールーミング買いは「実店舗を滅ぼす」など、悪者扱いされていました。なぜなら、当時はまだSNSを含め、事前に情報を調べてから来店する顧客がさほど多くなかったから。「ECサイトとの連携を強化したら、ネットに顧客が流れるだけ」と捉える企業が多かったのです。

オムニチャネルの3大要素とは

ですがその後、欧米の調査などにより、現代の顧客はECサイトやSNSと実店舗の間を「行ったり来たり」回遊しているとの事実が判明。企業もデジタルとリアルを含めた幅広いチャネルで顧客を捉えることで、顧客データの共有など、多くのメリットを享受できることが分かってきたのです。

ちなみに、オムニチャネルで重要とされる3大要素が、「1、在庫の一元管理」「2、価格の統一」、そして「3、スタッフ教育」。とくに3つ目のスタッフ教育は、実店舗でいかに商品を魅力的にプレゼンできるかという部分で、非常に重要とされます。

私が「Plantui(プラントゥイ)」のシリーズ商品を買ってしまったのも、まさにb8ta(ベータ)のスタッフによる説明が秀逸だったから。彼女は商品そのものを語るより、「この(水耕栽培の)プランターがあれば、ご自宅で育てたオーガニックなハーブやルッコラを使って、新鮮なお料理をご家族で味わっていただけたり……」など、商品によって実現する(であろう)「夢の暮らし」をイメージさせてくれました。

北川さんによると、「出品企業さまの商品トレーニング(研修)では、単に『スペックがこう変わりました』だけでなく、その企業のミッションや商品に込められた思いを、キチンとスタッフに伝えるようにしている」とのこと。

場合によると、出品企業の社長やブランドマネージャーが直接店舗を訪れ、スタッフに熱く語ることもあるとか。また、「スタッフ自身が楽しむ」ことも重視し、オンラインでクイズなどを取れ入れながら学べるシステムを導入する、などもしているそうです。

「欲しいモノがない」のではなく出会いがないだけ

「欲しいモノがない」……ここ数年、消費者への取材で嫌というほど耳にする言葉で、これは婚活でも同じ。「いい人がいない」は、独身の方々の決まり文句です。

ですが実は、ないわけではなく、「出会っていない」だけ。両者を仲介してくれる「おせっかいおばさん」のような存在こそが、近年の消費や婚活に求められているのです。

「フィードバックデータの精度や内容など、まだまだ改善すべき課題は多い」(北川さん)とのことですが、モノと人との出会いを仲介するb8ta(ベータ)のビジネスモデルが、これからの時代の小売りにおいて、求められていくことは間違いないでしょう。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。