「抽象化能力」を磨くにはどうすればいいか

意見や価値観の違った人から学べない人の、もう一つ別の理由についても触れておきましょう。

実社会で承認欲求が満たされていないと、他人の主義主張をあれこれ批判する傾向があります。こういう人は意外と多くて、ネットの世界では頻繁に出没します。特にSNSは承認欲求を満たすのに格好のツールで、相手を否定すれば相対的に自分の立場が上がるという壮大な勘違いを起こしやすいと言えます。

ではなぜ承認欲求が満たされないと感じるかというと、ここでもやはり抽象化という概念を使いこなせていないことが挙げられます。

本来は「こういう人生にしたい」という非常に抽象的な生き方の方向性(ビジョン)があり、「そのためにこの分野で能力を発揮しよう」「そのためにこういう仕事に就こう」「そのためにこの業務をしっかりこなそう」という具体的なタスクに落ちていきます。

上位概念の「こういう生き方をしたい」というビジョンがあれば、自分自身が納得できる成果を出している限り、自分の理想の生き方に向かっているという実感があるので、他人の評価は他人の評価として振り回されることはありません。

しかしそういう人生の上位概念がないと、目先の仕事で評価されないだけで「周りは自分を認めてくれない」「こんなにがんばっているのに評価してくれない」などという不満になるわけです。

そして、相手が悪い、書き手が悪いと主張し、自分が能無しではない、相手よりも賢いことを確認しないと気が済まない。逆に相手の主張を認めると、どこか自分が議論に負けたかのように感じ、自尊心が保てなくなるのです。

情報というのは、批判することには意味がなく、その中身を自分なりに咀嚼し、どうすれば自分の生活に取り入れられるか、どう修正すれば自分の役に立つかという姿勢を持つことが大切です。

それが抽象化能力を磨く方法の一つでもあります。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。