コンピューターのおかげで叱られなくなった現役時代

自分で思い切ってパソコンを買い、使い方を学び始めたのは50代の終わりごろでしたが、実はもっと若いころから、コンピューターには助けてもらっていたんです。

銀行に勤めていたころの若宮さん
銀行に勤めていたころの若宮さん(写真=本人提供)

私は高校を卒業してから60歳で定年退職するまで、銀行員として働いていました。

私が銀行に入ったころは、今から見ると江戸時代みたいなもんです(笑)。お札は指で数えて、計算はそろばん、ペンにインクをつけて帳簿をつけていました。でも私は不器用ですから、仕事が遅いんです。私が終わらないとみんな帰れないものだから「まだなの」「早くして」って、いつも先輩から叱られていました。

そのうち銀行にもコンピューターが導入されました。すると一気に潮目が変わったんです。どんなに人間が頑張っても、お札を数えるのは、機械のほうが早いに決まっている。字が下手でも、ワープロを使えばきれいに書いてくれます。「コンピューター様」のおかげで、私は叱られずにすむようになりました。

先端技術は私の味方

最近は、「人間の仕事がAI(人工知能)に奪われてしまうのでは」と脅威を感じている人もいるようですが、私はそんなふうでしたから、全然そうは思っていなくて、むしろ「AIなどの先端技術が、私の苦手なことをやってくれて助かっている」という感覚なんです。

例えば、hinadanのアプリを公開してすぐあと、アメリカのCNNの記者から「ネットニュースで取り上げたい」という英語のメールが届いたんです。

すぐにグーグル翻訳を使いました。文面をコピペして和訳して読み、返事を日本語で書いて、グーグル翻訳で英訳して返信しました。機械翻訳なので、多少おかしなところはあったかもしれませんが、何とか通じたようで、その日のうちにCNNに英語の記事が出ることになりました。英語の読み書きができなくても、グーグル翻訳という先端技術のおかげで、コミュニケーションができてしまったわけです。

定年退職後の世界を広げたパソコン

私がパソコンの使い方を学ぼうと思ったきっかけは、定年退職と親の介護でした。退職後は、家で母を介護することが決まっていて、そうするとなかなか外にも出られなくなるだろうと思ったんです。ただ、当時話題になっていた「パソコン通信」を使うと、家にいながらにしてたくさんの人とコミュニケーションができるらしいと聞いて関心を持ち、思い切ってパソコンを買ったんです。

早速、シニアの交流サイトを見つけて入会しました。このサイトは形を変えて現在は「メロウ倶楽部」として活動を続けており、私は副会長を務めています。ここでは大切なお友達がたくさんできました。

「インターネットの老人会」といわれるような会なので、とにかく車椅子の人でも寝たきりの人でも、すべてのサービスをエンジョイできるように、とやってきました。ですから、今回のコロナ禍で外出できなくても、運営に全く支障はきたしませんでした。随分前に、先輩方が電子投票の仕組みを作ってくれていたので、年次総会もオンラインでできました。