2020年7月、パーソル総合研究所と慶應義塾大学大学院SDM前野隆司教授の共同研究により、「はたらく人の幸福学プロジェクト」が発表されました。「働くこと=幸せ」という図式が成立しづらい現代において、どうしたら「働く」を通じて、幸福感を得られるのでしょうか。日本における「幸福学」のパイオニア的存在である前野教授に、働くことと幸せについて伺いました。
魅力的なビジネスウーマンがノートパソコンを抱えながらスマートフォンで話している
※写真はイメージです(写真=iStock.com/whyframestudio)

幸せと不幸せは反対の概念ではない

パーソル総合研究所との共同研究「はたらく人の幸せに関する調査」では、現在、国内で働く人たちの「幸せ」について調査研究し、その実態を明らかにすることができました。

働く人の幸せについて、今回の研究で注目したのは、幸せと不幸せは反対の概念ではないのではないか、という点です。従来の研究における主観的幸福感は、幸福度の高低を測定し、表すことが多く見られました。幸福尺度点数の高い人は「幸せ」であり、低い人は「幸せでない」と。つまり、幸せと不幸せが両極に位置していました。けれども、人は、幸せと不幸せを同時に感じることもあり、また、そのどちらも感じないこともあります。つまり、幸せと不幸せは反意語ではないのではないのか、というのが本研究の着眼点の面白いところです。

はたらくことを通じた幸せ・不幸せの状態