なぜ管理職は幸福度が高いのか

読者のなかには、マネジメントする立場の方も多くいらっしゃると思います。一般的に管理職というと、上司と部下の板挟みとか、重圧に耐えているといったイメージを抱きがちですが、実は先ほどご紹介した4つのタイプのうち、「幸せ×不幸せでない」群には、部長以上の役職に就く人が多く見られました。これはなぜでしょう。

冒頭でお伝えした「はたらく人の幸せ」7因子には、自己成長・自己裁量・役割認識・他者貢献といった因子が含まれています。管理職の幸福度が高い理由は、人を育てるということに加え、上記因子が影響していることがわかります。加えて、成長実感を持ちながら仕事をしている人は、当然、周りからも認められ、さらに責任のある役職を手に入れて昇進していくという要因も大きいでしょう。

成長実感をもてるマネジメントを

逆にいうと、上司は、メンバーに対して、ただやらせるのではなく、成長実感を持てるようにマネジメントすべきだといえるでしょう。また管理職でない人も、「私は管理職ではないから、幸福度は低いのか」ではなく、常に主体性をもって、創造性を発揮しながら、自分ごととして仕事に取り組んでいれば、自ずと、はたらく幸せを実感できるようになるのです。

何度もお伝えしていますが、私の研究する幸福学では、幸せの順位づけをするために研究をしているわけではありません。今回の研究報告をご覧になった人たちが、それぞれ携わる仕事において、自分たちの特徴を知り、良い部分は伸ばし、良くないと思う部分については改善するきっかけになればと思います。チームメンバー全員で創造性を発揮しながら、より良い職場、より良いチームを作るための手がかりになっていれば嬉しく思います。

構成=富岡 麻美 写真=iStock.com

前野 隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

1984年東京工業大学卒業、86年東京工業大学修士課程修了。キヤノン株式会社入社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。著書に『幸せのメカニズム』(講談社)、共著に『ウェルビーイング』(日本経済新聞出版)、『「老年幸福学」研究が教える 60歳から幸せが続く人の共通点』(青春新書インテリジェンス)など著書多数。