ボーナス増加率の高い企業もいまどき太っ腹だが、それなりの理由がある。
2010年夏のボーナスで点検してみよう。
第1位は、2009年夏比でほぼ倍増の約93万円の支給額となった三洋化成工業である。同社は、紙おむつなどに使われる高吸水性樹脂では、世界第4位のシェアを誇る。特にアジアでのシェアは20%を超えて強みを発揮している。
また、自動車用ポリウレタンフォーム原料や省燃費対応のミッションオイル、情報・電気電子産業関連製品なども需要が伸びて業績を拡大させた。
「この夏のボーナスが増えたのは、リーマン・ショックの影響で09年3月期の業績が悪化し、2009年夏のボーナスの支給額が少なかったのに対して、前期は業績が急回復したため2010年夏のボーナスが相対的に増えたということです。夏冬のボーナスを均せば、例年通りの金額に近くなるはずです」(三洋化成工業広報部)
とはいえ、高吸水性樹脂の需要は紙おむつなどに形を変えて、アジア地域で急速に伸びている。2010年度上期の営業利益は前年同期比150%。自動車関連も日本ではエコカー補助金がなくなって販売に落ち込みが見られるが、中国やインドなどの新興国で販売が好調だ。
「紙おむつは新興国で普及が進んでいます。従来品より水分の吸収量を1割強高めた新製品を開発し、すでに一部の紙おむつメーカーでの採用も決まりました。国内市場は先行きが不透明ですが、海外での需要は強く、業績が落ち込むことは考えにくいです」(同社広報部)
このほかにパソコン周辺機器メーカーのバッファローは、10年3月期の経常利益が前期比238%増の76億5200万円となり、この夏のボーナスは2009年夏比で56%増となった。電子部品メーカーのSMK、半導体製造装置メーカーのニューフレアテクノロジーなども、夏のボーナス増加率は40%を超える。
ボーナス増加率の上位企業に目立つのは、化学や電子部品、半導体関連を手掛ける企業だ。
「エコカー補助金やエコポイントで自動車や家電が注目されますが、実は自動車や薄型テレビなどの目立たぬところに化学製品が使われているのです。その化学製品は、実は高い技術力に裏打ちされたものが多く、韓国や中国メーカーと比べ高い価格優位性を持っています。半導体製造に関連する機械や電子部品関連でもれら技術力に裏打ちされた企業が好業績で、ボーナス増加率に反映されたということでしょう。また、環境関連の事業を手掛ける企業も強いですね」(第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・永濱利廣氏)
日本再生のカギは「太っ腹給料」にあり
1億円以上の役員報酬の個別開示が始まり話題になった2010年。日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEOは8億9000万円、日本人では大日本印刷の北島義俊社長が7億8700万円で最高だ。また、東証一部の自動車部品メーカー・ユーシンが社長を一般公募して話題になった。社長には3500万円以上の年収を提示する予定だ。
「グローバル経済下での競争相手は世界中にいます。中国や新興国などのようにキャッチアップの経済はみんながハッピーになれる。しかし、日本のように成熟化した経済では、そうはいきません。IT企業も同様ですが、組織力やチームワークもさることながら、“個の力”が重視される。個の力が利益を生み出すのです。個の力という意味では、経営者も同じです。M&Aなどが活発になっているように、経営者もリスクを負って経営している。個の力を発揮できる経営者やスペシャリスト社員に高額の報酬で報いるのも当然です」(永濱氏)
いまどき太っ腹が日本経済を強くするということだ。
※すべて雑誌掲載当時