自由という名の放置を防ぐためにやっていること
ダイバシティ推進室の室長である服部由佳さん(50代。入社36年目)は20年以上、両親の介護・仕事・育児を同時にこなし、子会社の社長を経験後、本社に戻り現職に就いた異色のキャリアを持つ。自身の経験も踏まえ、業務改革や、育児休暇や介護休暇をとっても不利益を被らないような人事制度改革を行った。新人からベテランまで、男女の性差なく全員が活躍できる会社づくりをしたいとの熱い思いがある。しかしXORKは“自由という名の放置”にもなりかねない。
「個人の働きが見えにくくなったり、チームの一体感がなくなる恐れがあったりするからです。だから私のチームでは、週に1回はテーブルを囲んで、仕事の進捗共有と同時に何げない会話をすることに。同僚の事情やアイデンティティーを理解することが大事であり、定期的に顔を合わせることで信頼感が深まると考えています」
服部さんは地方拠点に行くことも多く、最先端のXORKと地方拠点では環境に差があると感じている。だが、地方では環境整備にさまざまな工夫をし、社員間で良いコミュニケーションをとっているそうだ。マイノリティーを孤立させずダイバーシティを推進していくため、XORKでもチーム内の信頼感、目標が同じだという一体感が必要なのだろう。
あえて“青臭く”いたい。社長が描く未来のビジョン
イトーキは創業130年の、もともと“古い体質”の会社だが、平井社長自らが旧態依然の社風を打破するために行動している。ガラス張りの社長室では、常に立ったままで業務やミーティングを行う。「動き回っていることが多いので、座りっぱなしよりも明らかに血の巡りが良くなっていますよね。立場上、夜の会食なども多いのですが、体形維持にも役立っていると思います」と平井社長は笑う。
会議では座っているときより沈黙が少なくなり、時間も短縮。社長の行動がわかるので、社員も社長に直接声をかけやすくなった。しかしガラス張りゆえ、すべての行動を見られることに。社長室で立ってランチをとっているときなど、見学に訪れた顧客からしげしげと眺められることも……。
「動物園の動物状態です(苦笑)。でも自分がいいと思ってやっていることですから、何も隠すことはありません。いい意味での開き直りができ、心のバリアから解放されメンタルの健康も良くなっていますね」。
働き方が充実していると、おのずと人生も充実する。働く姿勢は、そのまま人生観にも反映される。
「理想ばかり言って青臭いと言われるかもしれませんが、あえて僕は青臭い社長でいたいのです。もちろん、生活のために働かなくてはならないけれど、やはり働くことは楽しいことだと言いたい。そう思うためには自律的に働こうとする気持ち、それを支える環境づくりがとても大切だと言い続けていきたいのです」
会社が生き残るのが難しい時代だが、“自由に働く”をデザインすることで日本の元気に貢献したい。それが平井社長の未来予想図だ。
撮影=アラタケンジ
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。