昼間の社内を見渡すと各人の働き方はバラバラ。一定の時間が経つと違うスペースに移動する人が多く、会社の中に“ノマドワーカー”(遊牧民風に移動しながら働く人)がいるかのよう。人事や総務などの管理部門でさえも自分専用の席はなく、活動のエリアが区切られているわけでもない。この新オフィス移転の先導役が、現社長の平井嘉朗さんだ。
「ABWとWELL認証という素晴らしい概念をお客さまに理解し、導入していただくには、まずは自社から変えていかないと説得力がありません。そこでXORKを新しく誕生させたのです」
移転から1年以上経過したが、平井社長は「自己裁量でいろんな場所で自由な働き方をし、モビリティー(動きやすさ、移動性)を活用できる人ほど、仕事の結果を出しているようです。その半面、上からの指示待ち系の社員は、結果を出しづらいかもしれません」と感じている。
とはいえ、新本社オフィスに移転するまでは、従来の日本の会社にありがちな固定席の空間で多くの社員が働いていた。引っ越し後「自分で働き方をデザインしなさい!」と言われても、戸惑いを覚える社員は少なくなかった。新入社員はもちろん、中堅やベテランでも迷いながら働いている社員はいる。一方で新オフィスを上手に使いこなしているのは、現段階では2割程度。しかし、半数以上の社員は徐々に面白いと思い始めているのではないかと平井社長は推測する。
他部署の人々との交流で会社全体を俯瞰する
まだ環境に慣れていない社員もいるなか、うまく順応しているのが経営企画部で働き、CSRも担当する阿志賀由香さん(30代。入社15年目)。彼女がメインで作成した「サステナビリティレポート2018」は、環境省と地球・人間環境フォーラムが主催する「環境コミュニケーション大賞」で優良賞を受賞。レポートを書くために、他部署の多くの人々に取材を行った。
「以前のオフィスでは、自分がいるフロアから出なかったこともあり、他部署の人々との交流が少なかったのです。今は隣や近くにいる人が、私と全く関係がない部署の社員だったりするので、この部署はこんな業務をしているのだということがわかるようになりました」
図は、阿志賀さんの、ある1日の働き方のデザイン。あちこちのスペースを活用し、座ったり立ったりして仕事をし、集中度の緩急をつけることで作業効率を高めている。小さな子どもがいるので、週1回のリモートワークを申請しているが、出社したほうが仕事ははかどるそう。WELL認証のおかげで、室温や湿度、周囲の音環境が快適にキープされている。社員のなかにはストレスが軽減し、風邪をひきにくくなった、花粉症が改善されたとのケースも。よく歩き回るようになったため10kg以上のダイエットに成功して、かなり健康的になった男性社員もいるそうだ。