説得に効く枕ことば3つ

「『ネイチャー』に発表された論文によりますと……」
「○○大学医学部で明らかにされたデータなのですが……」
「○○研究所の○○博士が言っているように……」

男性を説得する必要があるときには、こんな感じで切り出してみてください。水戸黄門の印籠を出されたときの悪代官のように、いきなり「ハハァ~」と頭を下げて受け入れてくれる人もいるはずです。女性を相手にするときは、もっと多様なアプローチがあると思いますが、男性は科学を信じているので、科学や権威のある研究機関のデータを示すことが一番の近道となるのです。

幸いなことに、インターネットを使えば、いろいろなデータが手に入るはずです。できるだけデータの出典が明らかにされている信ぴょう性の高いものを選びましょう。

この下準備をしておくだけで、男性を説得するのはとても容易になります。

占師を信じる女性、心理学者を信じる男性

ちなみに、女性にとっては、説得力があると感じられても、男性もそうとは限りません。たとえば、プライベートではよく話題に上がる星占いや、血液型占いや風水のようなもの。

そういうものを信じている女性は意外と多かったりするのですが、男性はそういうものでは動かされません。「うさんくさい」と感じるからです。

ロンドン大学のエイドリアン・ハーンハムは、男性と女性に、インチキな心理テストを実施してみたことがあります。診断結果は、全員に、まったく同じものが返却されました。ただし、男女それぞれ2グループに分け、一方にはテストは「占星術師による診断」であると伝え、もう一方には「心理学者による診断」と伝えました。それから「診断結果は、どれだけ自分の性格を言い当てていると思いますか?」と尋ねてみたのです。

その結果、女性は占星術師によるフィードバックを信じやすく、男性は心理学者のフィードバックを信じやすい、ということがわかりました。男性は、星占いのようなものだと説得力を感じないのです。

プライベートでも、男性を説得する必要があるときには、できる限り“科学の裏づけがあるもの”を選びましょう。「あまりよく知らない人なんだけど、こんなことを言ってたよ!」と、話の内容が素晴らしいことをどんなに伝えても、男性には受け入れにくいのです。男性を説得するときには、所属や肩書のしっかりした人を選ぶといいですね。そういう人の発言であれば、男性はあまり疑ったりせず、素直に受け入れてくれる可能性が高いのです。

(参考)
Trankina, M. L. 1993 Gender differences in attitudes toward science. Psychological Reports ,73, 123-130.
Furnham, A., & Schofield, S. 1987 Accepting personality test feedback: A review of the Barnum effect. Current Psychological Research ,6, 162-178.

写真=iStock.com

内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。