嫌われる上司は「部下の真意」が読めない

ポイント3:気持ちの中でも、部下の「真意に意識」を向ける

ここで言う真意とは、表面から捉えにくい本当の気持ちのことです。前述した、事柄の背景にある気持ちに意識を向けて聴いたとしても、部下の真意を捉えることは対面でも難しいものです。テレワーク環境下では、真意を捉えるのに必要とされる、微妙な表情の変化や熱量の変化が捉えづらく、難度はますます高まります。そのような状況下でも、部下の真意に意識を向け続ようとする上司が、好かれる上司なのではないでしょうか。ここでも、対比例をご紹介します。

【表面的な気持ちを捉える】
【部下】プレゼン当日は、自分のせいで自社に迷惑かける気がして不安なのです。
【上司】(プレゼンの内容が不安なのだろう)それなら大丈夫だよ、私もオンラインで同席するからプレゼン内容の補足をできるからさ。
【部下】(内容の不安はないのだけれど)……はい、ありがとうございます。

【真意に意識を向ける】
【部下】プレゼン当日は、自分のせいで自社に迷惑かける気がして不安なのです。
【上司】(不安と感じる真意は何だろう)当日、自社に迷惑かけることで不安なっているのだね。その気持ちはどこから来るのかな?
【部下】……実は、テレワークだと、リビングで仕事をするしかなく、2歳になる娘の声が気になってプレゼンに集中できないのです。

双方を比較すると、部下への理解の深さが大きく異なることが分かると思います。部下の真意に意識を向けるには、「部下は、第一声で真意を伝えないもの」という認識を持つことが大切です。なぜなら、部下には上司に負担をかけたくないといった配慮や、何を伝えたいのか自分でも整理できていないなど、さまざまな思いがあるからです。

上司はあえて嫌われようとしているわけではない

テレワーク環境下における、好かれる上司と嫌われる上司の違いとして、部下の気持ちを察する関わりをご紹介してきました。最後になりますが、具体的な関わり以上に、その根底にある「見えない状況でも、部下の気持ちを察しようとする姿勢」が大事であることは、お伝えしたいと思います。

冒頭に述べた通り、テレワーク環境下でマネジメント難度や負荷は、かつてない程高まっています。部下から嫌われる上司も、あえて嫌われようとしているのではなく、「そうなってしまう事情や理由」があるのかもしれません。そうなってしまう上司の立場・状況・気持ちを察しようする姿勢を部下も持っていると、お互いを生かし合える関係になれるはずです。

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星野 翔次(ほしの・しょうじ)
リクルートマネジメントソリューションズ OD事業開発室

ベンチャー企業・商社勤務を経て、2013年、リクルートキャリア入社。斡旋事業部の管理職として、部下がパフォーマンスを最大限発揮できるコミュニケーションを追求。その取り組みが評価され、最優秀マネジャー賞など、数々の表彰を受ける。19年、リクルートマネジメントソリューションズへ転籍。コンサルタントとして、上司部下間のコミュニケーション改革を起点とした、組織開発に携わっている。国家資格 キャリアコンサルタント。