浦安市内で3~4割の下落。
だが依然として湾岸人気は根強い
東日本大震災では首都圏の湾岸部を中心に「液状化現象」が起きた。このうち特に被害が大きかったのが千葉県浦安市だ。市内全域の85%で住宅や電柱が傾いたり、道路が陥没したりする被害を受け、約3万3000世帯で断水した。被害は事前の想定を大きく超えるものだった。
震災前、浦安市の分譲マンションの販売価格は平均で5000万円前後だった。リーマンショックによる急落後、じりじりと価格は上がっていたが、今回の影響で上昇前と同じ4000万円台前半にまで下落するだろう。下落幅は2割程度だ。地価は坪130万円前後だったが、3~4割ほど下落し、90万円前後になるとみている。
参考になるのが、さいたま市の南浦和駅周辺の相場だ。南北に走る京浜東北線と東西に走る武蔵野線で4地区に分かれ、それぞれの人気度は「S」「A」「B」「E」の4クラスに分かれる。いずれも南浦和駅からは同じ徒歩圏の距離だが、相場では、北西にあるSクラスは坪150万円、戸建分譲で5800万円、南東にあるEクラスは坪70万円、戸建分譲は2800万円と大きな差がある。さらにEクラスは、最近の実売では坪30万円にまで下がっている。価格差の理由は地盤だ。Eクラスの土地は埋め立て地で、直近まで水田か池だった。今回の震災では、埼玉県の久喜市南栗橋地区や千葉県我孫子市などでも液状化が起きている。内陸部でも、沼地や湿地のような場所では、液状化の恐れがある。
今回の地震では、強い横揺れが1分以上も続いた。このため水分量の多い砂や泥が地中から噴き出した。液状化のメカニズムにはまだ不明な点が多いが、ひとつの目安になるのは開発の時期だ。1970年代以降の湾岸埋め立てでは「海砂」が使われている。海砂は海底の砂で、水分量が多く密度が低い。それ以前にはゴミや土、それに「山砂」が使われていた。開発のピッチが上がり、密度の高い資材の確保が難しくなって、海砂が使われた。
もうひとつは基礎杭の深さだ。今回、浦安市では戸建てに大きな被害が出た一方、マンションはほぼ無事だった。マンションでは高密度の岩盤に届くよう40メートルほどの基礎杭を打つ。こうすれば不同沈下も傾きも防げる。だが戸建ての基礎杭は深さ2~3メートルにとどまる。戸建てでも、6メートルの基礎杭を打てば不同沈下は防げるが、地盤の歪みによる傾きまでは防げない。一度でも傾けば居住は難しく、傾きを直すには数百万円の費用がかかることもある。
戸建分譲の場合、分譲会社によっても明暗が分かれた。一部大手は地盤の構造計算を行っており、液状化の恐れがある場所はコスト高になるため避けていた。だが「パワービルダー」と呼ばれる新興メーカーの多くは地盤の構造計算をせず、むしろ南浦和の「Eクラス」のように、地元業者は手を出さない土地で、積極的に仕掛けている。
依然として東京湾岸部の人気は高い。浦安市でも、価格はいずれ下げ止まるだろう。むしろ闇雲な価格下落のなかでは、「買い得」の物件も出てくる。ただ、私個人としては、液状化したエリアはお勧めしない。