業績目標を達成できない企業の特徴
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。現場に入って経営者やマネジャーの愚痴を、さんざん聞かされている。
「社長が今年こそ目標達成と言っているのに、まだ達成できない人いるんだ」
営業部長がこう言うと、
「何を考えているんだろう? このまま業績が下降していったらどうするんだ」
「ハッキリ言わないと、わからないのかなァ。最近の若い人は」
と、同調する課長たちがいる。
目標を達成できない組織の特徴はいろいろあるが、ここ数年、顕著に出ている例が、個人の「主体性」に依存した組織運営がうまくいっていないことだ。
たとえば、業績が低迷している企業に、私どもが以下のように具体的に介入することがある。しかし歯切れの悪い返答しか返ってこないのだ。
次の会話文を読んでほしい。
【コンサルタント】「既存のお客様だけの対応では、中期経営計画を達成させることができません。マーケットの概況をみると、こちらの業界に対するマーケティング活動を強化したほうがいいです」
【営業課長】「いやあ、そうは言われても……」
【コンサルタント】「何か問題でもあるのですか」
【営業課長】「仰ることはわかりますが、私としては部下の主体性を尊重したいのです」
【コンサルタント】「主体性は尊重されたらいいと思います」
【営業課長】「ですから、このように上から押し付けるようなやり方はどうかと……」
【コンサルタント】「何を言ってるんですか」
すでに答えがわかっていることでも、部下たち自身で主体的に考えてほしいと言ってきかない。
「そんな悠長なことを言っていられないでしょう」と私どもが主張しても、部課長たちは、「個人の『やりがい』を尊重したい」「『やらされ感』を覚えるような言い方はマズイ」などと言って譲らない。
料理で例えるなら、美味しい食材選びのコツを指南しているのに、「自分たちで主体的に考えさせてほしい」と言い張っているようなもの。そんな遠回りなことをさせて「やりがい」も「働きがい」もないだろう。
緊急時なのに「非ストレート系」の表現が飛び交う
このように、ここ10年近くで、何事も上から押し付けるような言説を控える文化が、多くの企業に浸透した。
だから、今回のコロナ対策でも「要請」とか「推奨」といった「非ストレート系」の表現が組織内でやたらと飛び交う。緊急事態宣言が発令されても、決して「強制ではない」と言い、個人の解釈次第でどうとでもとれるような発信を、社長みずからがしてしまう。
花王のように「出社禁止」といった強い対策がとれる企業はかなり限られている。
だから、企業で働く者たちは上司の顔色をうかがうことになるのだ。