新型コロナウイルスの感染拡大を機に、フレックスタイムやリモートワークを実施する企業も出始めました。朝の満員電車は多少の緩和がみられるものの、大きく改善しているわけではありません。感染リスクがあっても定時出社が変わらないのはなぜなのか、筒井淳也先生に聞きました。
東京の地下鉄の駅のプラットホーム
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Rich Legg)

定時出社を続ける経営トップの意識は

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、安倍首相は全国の小中高等学校に臨時休校を要請しました。国として大きな危機感を抱いていることの表れだと思いますが、一方で各企業は学校にならって休業することは容易ではありませんので、活動を継続させながらの感染防止対策を進める必要があります。

実際、一部の企業ではラッシュアワーの通勤を避けたり在宅勤務を奨励したりし始めました。しかし、東京の通勤電車は今も混雑が続いています。これは、多くの企業が従来通りの“定時出社”を続けているからだと思われます。

出社や退社の定時は、その企業における働き方の基本ルールとも言えるものですから、社員の声だけではなかなか変えられません。変えるには、経営トップによる明確な意思表示が必要でしょう。つまり、その人たちが感染防止や働き方について、どんな意識を持っているかにかかっているのです。

これまでも、自然災害や東京五輪などに備えて「働き方を柔軟にすべき」という声は上がっていました。そうした声をきっかけにリモートワークを取り入れる企業も増え始め、今では成果や効率がアップしたという良い前例もできつつあります。

この流れは少しずつ進んでいくと思いますが、現状ではまだ「社員は皆、同じ時刻に同じ場所で働くもの」という考え方の人が多数派のようです。実際、政府がサテライトオフィス勤務や在宅勤務などを含む「テレワーク」を推進し始めてから何年もたちますが、今回の感染を受けての動きが始まるまでは、あまり広がってきませんでした。