ミスやクオリティーの低下に不寛容な日本社会
一定数の人たちが、リモートワークやテレワークを敬遠するのはなぜなのでしょうか。一つの理由は、取り入れた時のメリットよりも、失敗した時のデメリットに意識が向いているためだと思われます。
リモートワークが未経験の企業であれば、ミスが増えるのではないか、仕事のクオリティーが下がるのではないかと不安が先立つことでしょう。この場合、「今のままでうまくいっているんだからわざわざ変えなくても」という結論になりがちです。
しかし、導入した結果どうなるかは、やってみなければわからないこと。今はリモートワークが定着している企業も、導入時には多少の不安があったはずです。それを想定し、許容した上で導入して「やってみたら意外とできるじゃん」と思えたから続いているのではないでしょうか。
ところが、日本社会は概してミスに不寛容です。顧客に対して失礼があってはならないと考え、顧客側がミスのないクオリティーの高い仕事ぶりを「当然のもの」として要求することもたびたびです。
これでは、働き方を変えるのに及び腰になっても仕方がありません。日本でリモートワークが広がるには、まず多少のミスやクオリティー低下も許容する姿勢が必要だと思います。新しい働き方は、まずやってみることが大事。トライしてみて不具合が出てきたら、そこを一つずつ埋めていけばいいのです。
仕事を受ける側も発注する側も寛容になること。そして、不具合が出たらその都度改善していけばいいと考えること。経営トップがこの2つを意識できるようになれば、どんな時にも定時出社を死守させるような企業は減っていくのではないでしょうか。
顧客に対して強気になれる上司が必要
日本の管理職、店舗であれば店長の中には、部下や店員がミスをした時に客に謝るのが自分の仕事だと考えている人も少なくないようです。しかし、そもそも顧客の要求自体が理不尽だったとしたら、トップがすべきなのは謝ることではなく、それをはねつけることです。「当社はこういう働き方を推進しているので」と堂々と言えるトップが増えれば、日本の働き方改革はもっと加速するはずです。
ただ、話は簡単ではありません。こうした姿勢を貫けるのは、自社の商品やサービスに自信のある企業だけかもしれません。顧客を広告や営業力だけで必死につなぎとめている企業は、そうはいかないでしょう。売り上げを顧客と営業マンとの人間関係に頼っている企業は、顧客の要求を全て聞いてしまいがちで、自然と社員の働き方もきつくなります。こうした構造の会社では、働き方改革もなかなか進みません。