進学する子どもたちのフォローは?

学年が変わる4月は、もともと子どもたちにはストレスのかかる時期です。

通常、例えば小学3年生が4年生になるときには、3年生のときの授業で遅れた分は、4年生でフォローしますが、小学6年生や中学3年生で遅れた分については、進学先の学校に報告することになっています。

しかし、中学3年生で、もし5、6クラスの生徒がいるとなると、進学先は70から80校、多いところでは100校を超えることもあります。こういう状況下で、とてもきめ細かい情報の引継ぎが可能だとは思えません。少しシミュレーションをしてみればすぐにわかるはずなのに、現場をまったく想定していないのです。

突然の臨時休校要請は避けて!

そもそも、今も全国的にまだ感染者数は増加していて、首都圏では外出自粛要請が出ています。「緊急事態宣言が出るのではないか」「東京がロックダウンされるのではないか」と言われているほどの危機的な状況なのに、3月末の段階で政府は4月に予定通り学校を再開する方針を崩していませんでした。学校には、「密閉」「密集」「密接」の「三密」すべてがそろっているのに大丈夫なのか。本当に理解できません。

感染者が急増している都市部では、また臨時休校要請を出す可能性もあるということですが、もし休校をするならば、すぐにでも要請をすべきだと思います。再開するのも休校にするのも、現場は本当に大変なのです。突然の、直前の要請は避けてほしいですし、現場への具体的なサポートも必ずあわせて提示すべきです。そうでなければまた、1カ月前の二の舞になります。

新型コロナウイルスよりも、日本政府のリーダーシップの弱さの方が怖い。これこそが、国家の危機なのではないかと危惧しています。

構成=大井 明子 写真提供=尾木直樹氏

尾木 直樹(おぎ・なおき)
教育評論家・元法政大学教授

1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開、その後大学教員に転身して22年、合計44年間教壇に立つ。「尾木ママ」の愛称で親しまれ、テレビ出演や講演活動にも精力的に取り組んでいる。