テレビや新聞の広告で不安をあおられて、気がつくと手元に保険が何本も……。必要な保険、不要な保険をどう選別したらいいのか?
支払いが10万以上!? ムダ取りチャートで「保険貧乏」から脱出
サラリーマンの給与頭打ちが社会問題になっている。でも、「とうの昔から俺たちは悲哀を味わっているさ」と、一連の騒動を冷ややかに見ている世代がいる。定年のことが、頭のなかから離れなくなった50代である。
子育ても一段落して余裕綽々だろうと思われがちだが、内情は苦しい。奥さんのパート勤めも当たり前。50代の約21%は無貯蓄で、また約51%が住宅ローンなどの借金を抱えている(金融広報中央委員会調べ)。
しかし、そんな苦しいはずの50代の家庭に限って何本もの保険に入り、毎月の保険料が10万円以上ということも意外と多い。相談を受けながら、「あくせくしながら、何で保険会社を儲けさせているのか」と憤りを感じつつも、悲劇を通りこして喜劇のように思えてくることすらある。
「どんな保険に入っていますか。お持ちいただいた証券で確認していきましょう」。そう尋ねると、お決まりの定期保険特約付終身保険にはじまって、医療保険、養老保険、個人年金保険、ガン保険、傷害保険、学資保険など10通以上の証券をカバンからごそごそ取り出してくる。机の上は瞬く間“保険のデパート状態”と化す。
「何でこんなにたくさん入っているのですか」。半ば呆れながら聞くと、次のような答えが返ってくる。
「テレビや新聞で保険の広告を見ると、つい『病気で入院したり、交通事故に遭ったら大変だから入っておこうか』という気になるのです。毎月の掛け金だって数千円で済みますし……」
ちょっと不安をあおられ、割安のように思える保険料を提示されただけで、衝動買いならぬ“衝動加入”をしてしまうのだ。最近、男性の更年期障害が指摘されている。精神的に不安定となり、すぐ保険にすがってしまうのかもしれない。でも、自己弁護したところで財布の中身は減っていく一方だ。
そこで、自分にとって本当に必要な保険、有利な保険に絞り込み、少しでもキャッシュフローを楽にして、来るべき定年後の生活に備えておきたい。その際に参考にしてほしいのが、図のフローチャートである。
まず、満期金や年金などの形でお金が戻ってくる貯蓄性のある保険なのか、掛け捨てで終わってしまう保険なのかを確かめる。掛け捨てであっても、団体保険や労働組合の共済ならば、民間のものよりも安い保険料で手厚い保障が受けられることが多く、必要なものなら残しておいても構わない。
次に貯蓄性の保険なら、契約日が1996年4月1日以前かどうかでふるいにかけてみる。というのも【50代-1】でも触れたように、これ以前の保険の場合、契約者に対して約束された運用利回り(予定利率)が3.75%以上あり、資産運用の面でも有利な金融商品に位置付けることができるからだ。
しかし、大きな問題がある。個人年金保険や学資保険なら、そのまま残しておけばいいのだが、終身保険や養老保険はムダな特約が付いていることが多い。その代表が何度も指摘してきた定期保険特約付終身保険だ。それをチェックし、対策を打っていく。
もし、特約だけ解約できることがわかったならば、次のように行動してほしい。契約者自ら保険会社の本社か支社に出向き、お客さま窓口で直接解約の手続きを行うのだ。まかり間違っても、顔なじみの担当営業マンに声をかけてはいけない。見直しを逆手にとって、新しい保険商品の売り込み攻勢をかけられるのがオチだからである。
また、手続きの際には契約者本人が(1)保険証券、(2)契約に使った印鑑、(3)免許証など本人確認できるもの、(4)解約返戻金の振込口座番号のわかるもの、を忘れずに持って行くこと。1つでも忘れて二度手間になると、その間に担当営業マンに連絡がいき、「何で解約するのですか」と横槍を入れにくる。
特約の解約に応じてくれない場合は、「払済保険」に変更することを検討したい。たとえば、定期保険特約付終身保険を払済保険にすると、そのときの解約返戻金を元手に買えるだけの終身保険に入ることになる。終身保険の保険金額は低くなるものの、高い予定利率が維持され保険料を支払う必要がなくなる。なお、必要な保障を新規に確保したうえで古い保険を解約することが、見直しの基本である。