4回ほど、会社を辞めようと思った
【白河】その意味では、働き方改革は「生き方改革」でもありますね。男性も含めた全員がワークライフバランスを考えるようになれば、多様性が進んで働き方も自然に変わってきそうです。
【柄澤】40年程前イギリスで知り合ったドイツ人の友人は、2カ月のバカンスを、海外での見聞を広めたり新しい分野を学んだりと有効に活用していました。日本人にもこうした自らを啓発する時間が必要です。せめて5~10年に1回はこういう機会をと会社に掛け合ったことがありますが、当時実現したのは数日間のリフレッシュ休暇でした(笑)。
【白河】日本では、2カ月勉強に専念しようと思ったら、退職も覚悟しなければなりませんね。
【柄澤】実は、私も退職を考えたことが4回ほどあるんですよ。転職や、自分をもっと高めるために社外で学びたかったのですが、時代的に時期尚早だったようで、社内にとどまりました。良い上司、同僚に恵まれたこともあり、結局は良かったのですが。でも、今の人はずっと会社に縛られなくてもいい。転職・退職をして自分の能力を試し、興味や可能性を拡げてまた戻るといった「出入りの自由」が、もっとあっていいと思います。私の身近でもそういう事例は少なくありません。
希望があれば育休中も在宅で仕事可能
【白河】縛られた働き方も、キャリアアップへの意欲をそぐ原因の一つかもしれません。企業からは「女性管理職は増やしたいが本人がやりたがらない」という声もよく聞きます。
【柄澤】私は、女性活躍が進まないのには2つの理由があると思っています。第一は職場環境。これを改善するには、長時間労働の是正、勤務形態の多様化、ライフイベント時の休暇~復帰行程の整備、男性の育休などが必要です。当社には、19時前退社ルール、在宅勤務など多様な働き方を認める制度があります。育休中の社員には、キャリアロスを回避し、安心して復帰できるよう、本人の希望にもとづいて自宅でできる定型業務などを依頼する仕組みもあります。また、男性の育休は、取得日数は短いものの取得率は85%に上っていて、職場の同じ立場の女性に配慮するようになる効果も表れています。
【白河】育休中に自宅で仕事ができれば、勘も鈍らずにすみますね。ただ、復帰後に時短勤務を選択する女性も多いですが、企業によっては同じ成果を出していてもフルタイムの社員より評価が低いケースがあります。
【柄澤】当社では、時短勤務の社員にはフルタイムで勤務する同僚との相対的な比較はせず、上司がその人の働きそのものを見る「絶対評価(制約がある時間内で挙げた成果を評価する)」を行っています。また、育休復帰後の社員をサポートする職場の負担を軽くするため、時短勤務者は定員にカウントせず、追加で要員を配置し、職場復帰が円滑に進むようサポートしています。