誰もが働きやすい会社風土をつくるポイントは?

——たとえば女性には難しい仕事がある。それを「区別でもなく、差別でもなく、配慮」とおっしゃいましたが、この3つの違いがまだストンと理解できていない部分があります。

懇親会ではサインを求める列も。
懇親会ではサインを求める列も。

「配慮という言葉は抽象的ですからね。小嶋はよく『人を見て法を説け』と言いました。同じテーマでも、人に合わせて言い方を変える。人事をやっていると、いちばんラクなのは一律の制度で全部を処すること。でもそれでは、クリエイティブな職能の人、営業の人と、それぞれに違う人材のニーズに対応することは難しいでしょう。『私はこっちのレールで行く、私はこの電車に乗る』ということができるように選択肢を整備していかないと。それが人を丁寧に扱う、ということ」

——小嶋さんはトップとして企業の風土をつくってきました。トップ層ではないメンバーにも、企業の風土はつくれますか? できるとすれば、何に注意すればよいでしょうか?

「企業風土って、一言でいえば上に立つ人の管理行動なんです。言葉じゃなくて行動。だから、どう行動するか、です。自分が何もせずに、部下だけを動かす。部下の手柄を自分のものにする。何か言ったら処罰の対象になる。そういうことではダメです。大きな会社で問題が起きるときって、みんなそうですよね。知っているけれど、見ざる聞かざる。子どもだって、親の言うことより、親の行動を真似まねしますよね。それと同じです」

「問題あるか?」の質問の意図

——著書のなかで、小嶋さんはよく「問題あるか?」と聞く、という話がありました。問題の本質を引き出すのは難しく、尋ねられても「何も問題ありません」と答える現場が多いと思います。小嶋さんはどういうコミュニケーションで引き出していったのでしょうか?

「小嶋が言う問題って、必ずしもプロブレムのことではない。『あんた、困ってることあらへんか?』という幅広いものなんです。たとえば予算の未達を問題ととらえる人もいれば、家族の病気で看病に時間を割きたいと困っている人もいる。たとえば小嶋は、親の介護で早く帰りたいという人がいれば、必ず私に言ってきましたよ。『あの子な、実家のお母さんが病気だからなんとかしたって』と。聞くだけじゃなく、ちゃんと行動しますから。そしたら、私も『今すぐはできないけど、実家近くへの転勤、半年待ってな』と。そういうことが信頼につながります。岡田さんも同じで、よく『どや?』って言っていましたね。どや? って言われても難しいけれど(笑)、二人とも聞き上手ですよ」