知らないことが仕事の強みになりうる
18年から丸井グループに新しく証券会社が加わった。クレジットカードで月3000円から投資信託を購入できるので、将来の生活資金に不安を持つ若者を中心に好評だ。そのtsumiki証券でCEOを務めるのが寒竹明日美さん(40代。入社23年目)。グループのさまざまな会社と部署を異動して実績を残し、女性管理職の旗頭となった。
「職種変更で得たものはたくさんあります。たとえば財務に全く興味がなかったけれど、やってみたら面白かったし、当社が赤字を出した時期にIRを担当したのも大きな経験になりましたね。知り合いのつてを頼って、IR先進企業に突撃取材をして、手探り状態で業務にチャレンジしたこともありました」。丸井グループの中枢で着実にリーダーとしての頭角を現した寒竹さんだが、最も大きな職種変更となったのが、tsumiki証券の立ち上げのヘッドになったこと。証券に関してほとんど知識がなかったというのに――。
「関東財務局に電話をして『丸井グループですが、証券事業を始めるにはどうしたらいいですか?』と問い合わせたらいたずら電話だと思われました(苦笑)。そこから法律に沿って金融庁に届け出をしたり、お客さまにヒアリングしながらサービス内容をつくったりとクリアすべき業務が山積。それを約10カ月でこなしたので、ダーッと駆け抜けていった感じがします」と振り返るが、プレッシャーに押しつぶされそうにならなかったのか?
「何を言われても動じない鈍感力(笑)で、やるべきことを粛々とやるしかない。私は体が丈夫なので、なんとか乗り越えられました」
どんなに仕事が重なっても家に仕事は持ち帰らない。休日は農家で畑仕事のボランティアをして、仕事のことは考えない。オンオフをきっちり切り替えられる、タフな精神力がないとリーダーは務まらないのだ。
当初の寒竹さん同様に証券に関してあまり知識がない社員もいるが、それがかえって強みに。“金融ビギナー”に響く、わかりやすい優しいサービスを目指していく点にtsumiki証券の勝算がありそうだ。