自ら異動を希望して、やりたいことを次々に発見
竹下萌さん(30代。入社11年目)は入社後、婦人靴売り場に配属されたが、その後従来の百貨店型の店舗をSC(ショッピングセンター)に移行させるための部署に異動した。SCに変わると、英会話スクール、エステサロン、託児所など、モノを売らない体験型ショップを導入できるメリットがあり、家賃として定額収入を得ることもできる。これも世の中のニーズを読んでの改革だ。
「最初は与えられた業務の中で仕事を回していく感覚でしたが、そのうち自分がどうやったら強みを仕事で生かせるのかよく考えるようになりました。すると次々にやりたいことがつながっていったのです」。その後自己申告で異動希望を出し、不動産事業、財務、投資調査部などを経て、現在は人事に携わる。1つの業務だけにとらわれるのではなく、職種変更で視野を広げていった。
さらには、社内の次世代経営者育成プログラムの1期生になり、海外派遣セミナー、店舗改装プロジェクトにも参加。また、有給休暇を使って社外ボランティアに携わるなど、意欲的に活動している。「当社では入社のスタートが小売り。だから社員は“小売りマインド”を持った人が多くて『お客さまの役に立ちたい』という思いが強すぎる傾向があります。それも大事ですが、もっと自分の気持ちに正直になって、やりたいことをやれたら、周囲も自分も幸せになれるような気がします」
次世代のために自分が残せるものとは?
社員が積極的に会社プロジェクトや中期経営推進会議に参加する社風を、丸井グループでは「手挙げの文化」と呼ぶ。森本梓さん(30代。入社18年目)も、“手挙げ”のプロジェクトに関わっている。7歳と5歳の子どもを育てながら、社内会議やセミナーに積極的に参加し、18年は新規事業コンクールにも応募した。
小さな子どもを持つお母さんたちが安心して働けるサービスのアイデアを考案し、100件以上の応募の中から見事、優秀賞(第2位)を受賞。現在はそのアイデアの具現化に向けて検証を行うチームのリーダーに。子どもの何げないひとことから、新規事業の着想を得たそう。
しかし、グループの社員を巻き込み、会社のリソースを使いながら、時短勤務の中で集中して検証を進めるのはかなりハードだ。「なんとか事業にしようと頑張っていますが、周囲に楽観的すぎると言われることも(笑)」。後に続くお母さん社員のためにも、子どもたちのためにも必ず事業にしたい。そして丸井グループは子どもを育てながら働くにもいい環境だよ、と言えるようになりたい、という情熱が伝わってくる。その思いは、睡眠時間3~4時間の忙しい毎日で前向きに奮闘する森本さんの支えになっているのだろう。