トップダウン方式からボトムアップへの転換
昭和、平成、令和にかけて丸井グループの激動の歴史をつぶさに見てきた専務執行役員の石井友夫さん(50代。入社36年目)に、丸井グループの復活のキーポイントを聞いた。
「現社長は創業家の3代目。創業家が経営者だと、上意下達のトップダウン方式を採用する会社が多いのですが、それでは将来的に経営が行き詰まる。だから反対のボトムアップ方式、つまり現場や若手社員からの意見を吸い上げるべきだと社長自らが感じて改革をしてきました。それが職種変更や次世代経営者育成プログラム、新規事業コンクールにつながっています。最近では中期経営推進会議に多くの若手社員が参加するようになり、どんどん参加率が上がってきています。自分で手を挙げる人こそ成長する、という意識が浸透してきたのでしょう」
くだんの中期経営推進会議は幹部社員しか参加できなかったが、16年以降、新入社員を含めた幹部以外の社員も参加できるようになった。丸井グループを取り巻く社会環境と未来について語り合い、さらには外部講師の有意義なレクチャーも聞けるが、希望者全員が参加できるわけではなく倍率は3~5倍という狭き門。
「当社の社員は、人と接したり話し合うのが好きな人間が多く集まっています。積極的にプロジェクトや会議に参加していると、どうやったらお客さまのためになるか、他の社員のためになるかを思案することが大切だと肌感覚でわかってくるのです」
もともと、所得の少ない人でも大きな買い物ができるようにするという社会問題の解決から出発している丸井グループ。「持続可能な企業であるためには、人が好きで、人の痛みがわかる企業であり続けるべき」と石井さん。ずっと遠い先の将来を見据えた新しいチャレンジも、すでに始まっている。
撮影=アラタケンジ
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。