助言にも「納得がいかない!」と反発

ダメ出しされて悔し涙を流し、助言にも「納得がいかない!」と反発した。全社的なシステムの障害にもつながるような深刻なエラーが起きている状態で、とても根本的な解決を考える余裕はなく、悶々もんもんとした。だが、同僚から抜本的な改革を提案されて、大きな決断をする。

「NISSAY IT-XNET」という証券管理事務を支えるシステム基盤を立ち上げたのだが、約20年前、当時としては画期的なシステムゆえ周囲の反発が強く、それが完成するまでにはさらなる作業に追われた。だが、「そのシステムは現在も使われているし、他社に買ってもらえる商品にもなっているんですよ」と明るい表情で乗り越えた壁を振り返る。

「苦しいほど学ぶことが多い。死にものぐるいで知恵を絞りますから、成功したときより失敗したときのほうが自分の糧になると思います」

その後、ロンドン事務所では同時多発テロによる混乱を経験。地方銀行と取引する金融法人第二部担当部長に就任する直前には東日本大震災が起きた。まさにリスクに直面しながらキャリアを積み上げ、入社31年目で執行役員に。何十兆円もの資産運用をしていくうえで、サイバー攻撃や国際政治の不安定さなど、さまざまなリスクに対応している。

「キャリア初期に勉強した金融の知識や、人事部や広報部で鍛えたコミュニケーション術、各部署で築いた社内ネットワークなどが、すべて今につながっています。まさに『点が線に、線が面に』と村木さんがおっしゃった通りだったと思いますね」と長いキャリアを俯瞰ふかんし、後輩に助言を贈る。

「若い頃は先が見えないし、結婚などの問題もありしんどいもの。毎回100点でなくていいので、ひとつひとつの仕事にうまく可能性を残しておくと、40代で一気に人生の先が見えてくると思いますよ」

役員の素顔に迫るQ&A

Q 好きな言葉
人生感意気 (人生意気いきに感ず)

コーギー犬のキーホルダー

Q 趣味
ボランティアのオーケストラ活動

Q ストレス発散
ハープを演奏すること

Q 愛読書
サンテグジュペリ著『星の王子さま

Q Favorite item
ロンドン事務所メンバーの送別の品であるコーギー犬のキーホルダー

文=小田慶子 撮影=市来朋久

大澤 晶子(おおさわ・あきこ)
日本生命保険相互会社 執行役員 リスク管理統括部 部長

1988年、東京大学理学部卒業。日本生命保険相互会社に入社し、資金債券部、人事部、証券管理部などでキャリアを積む。2009年、総合職としては女性初の部長に就任。アメリカに留学してMBAを取得し、2度のロンドン事務所勤務を経験した国際派でもある。18年より現職。