昇進後の育休で店長に逆戻り
仕事への意欲を取り戻し、キャリアアップを目指して新たなチャレンジが始まった。折しも会社は事業拡大の真っ最中。石田さんの活躍の場も広がり、中四国エリア初となる岡山店を任されたのち、念願のエリアマネージャーに昇進。全国を飛び回って店を育てる、充実した日々が続いた。
ただ、その裏では働く女性の多くが抱えるジレンマも。昇進後に第一子を出産し、それまでのように自由には動けなくなったのだ。義両親が育児をサポートしてくれたものの、会社の事業拡大はピークを迎えていて目の回るような忙しさ。「もっと頑張らなきゃ置いていかれる」と焦ることもたびたびだった。
そこで石田さんは、仕事のやり方を大幅に変更。それまで感覚的にやってきたことを全部マニュアル形式にまとめて、自分が動けない時は代わってもらえる体制を整えたのだ。
「以前は人に説明するより自分で動いちゃうタイプだったんですが、それじゃ育児とは両立できない。結果的に、効率のいい時間の使い方や論理的に伝える力が身についたので、自己成長のいい機会になりました」
第一子の出産時は、置いていかれるという不安から前後2カ月休んだだけで復帰。だが、周囲に専業主婦が多かったこともあり、「自分は子どもと過ごす時間が少なすぎるのでは」と葛藤し続けていたという。そんな思いから、第二子の出産時には産休・育休あわせて1年半の休みをとった。
会社の成長期に長期の休みを取れば、後輩には追い抜かれるだろうし同じ職には戻れないかもしれない。それも覚悟の上で育児を優先した石田さん。キャリアの岐路ともいえる大きな決断だったが、「子どもたちとの時間がつくれて満足でしたし、今もよかったと思っています」と振り返る。
しかし、復帰後の道のりを聞くとなかなかに険しい。両立のため職位はエリアマネージャーから店長へと下がり、上司はかつて自分が採用した後輩。再度キャリアアップしようにも、両立への不安からなかなか挑戦できなかった。