どんな岐路でも「自分で決める」ことが大事
「男女平等の時代とはいえ、どう両立するかという話題になるのは今もまだ女性だけ。男性の働き方に両立という話題は出てきません。私のような女性役員の存在が、誰もが活躍したければチャレンジできると思えるきっかけになったらいいですね」
石田さんも、復帰後いったんはキャリアアップをあきらめたのだそう。悔しさはあったが、「自分の不満は目の前にいる生徒さんやスタッフには関係ない」と、今の立場で生徒や会社のためにできることを一生懸命考えたという。
また、復帰後の店長職では京都店での失敗も糧になった。今回はスタッフの心に寄り添いながら意欲を引き出すことに成功し、全国最下位だった店舗を1位にまで導く。この成果が認められ、石田さんは再びエリアマネージャーに返り咲いた。
「でもね、うれしさより不安のほうが大きかったんですよ。その時点で育児と仕事をバランスよく両立できていたので、昇進したらこれが崩れるんじゃないかと」
実際にやってみると、2度目のマネージャー職ということで以前より上手に、効率よく両立できるようになっていた。また、復帰後に再度部下の立場を経験したことで、思い描いていた“いい上司”像を実践することもできた。
その後、会社の体制変更によって再び店長職に戻り、滋賀県初となる店舗のオープンを任される。このプロジェクトではついに、集客とスタッフ育成の両立を継続できる“理想のスタジオ”を実現。キャリアの集大成として、自分が得てきた知識と経験をフルに生かした結果だった。
やがてエリア執行役に昇進。育児がひと段落していたこともあり、今度は仕事に全力投球できた。裁量権も大きく広がり、以降はとりわけスタッフの育成に力を注ぐようになった。
「入社当時は、こんな未来が待っているなんて想像もしていませんでした。今の私があるのは、上司や会社が期待を寄せてくれて、力を伸ばしてくれたから。今度は自分がそうする番だと思っています」
最後に、働く女性へのメッセージとして「自分で決めることが大事」と語ってくれた。キャリアを積む、家庭を優先する、どちらを選んでもいいこともあればできなくなることもある。けれど、それをわかった上で自分で決断したのなら、きっと糧にできるはず──。どんな経験も力に変えてきた石田さん。その考え方は、両立に悩む女性たちにとって大きなヒントになりそうだ。
■役員の素顔に迫るQ&A
Q 好きな言葉
経験が財産
Q 趣味
愛犬との時間
Q Favorite Item
スケジュール帳、スマホ
「仕事の予定はスケジュール帳で管理。心に留めておきたいことも切り抜きをどんどん貼り付けています。家庭の予定管理にはスマホアプリを活用しています」
文=辻村洋子 撮影=小林久井
1975年生まれ。銀行勤務を経てジェンヌ(現・ABC Cooking Studio)に入社。スタジオ運営スタッフとして働きはじめ、入社1年目に店長、4年目にはエリア責任者となり関西・北陸エリアのスタジオを統括。新店舗立ち上げや人材開発・育成に携わる。2017年よりエリア執行役、19年より現職。二児の母。