マネジメントに失敗して辞める人が続出
「あまりに仕事が楽しかったので、子どもはもう少し待とうって夫にも言って(笑)。自分なりの目標もとんとん拍子に達成できて、本当に順風満帆でした。でも今思えば、それって周りに恵まれていたからなんですよね」
入社後1年もたたないうちに契約社員から正社員になり、翌年には店長に抜擢。店を大きく成長させた。ところが、順調だったキャリアは異動をきっかけに暗転する。夫の転勤に伴って大阪店へ移動し、まったく違う環境で店長を務めることになったのだ。
名古屋店ではスタッフ同士の結束がかたく、皆が一丸となって働いていたそう。「だから、がんばろうねって言えば皆がんばってくれるものだと思っていたんですよ」と石田さん。だが、店が違えばチームワークも違うもの。恵まれた環境を離れて、初めてマネジメントの難しさを知った。
この悩みは、次に任された京都店でさらに大きくなる。新規オープンの店だったため、スタッフの育成も集客もゼロからの出発。集客のためにはスタッフを成長させなきゃと厳しく指導を続けたが、石田さんの熱意とは裏腹に辞める人が続出した。自分は店長に向いていないのではと悩み、退職まで考えたという。
「自分がとんとん拍子にきたものだから、できない人の気持ちがわからなかったんです。私の役目は皆のやる気を引き出して、結果を出させてあげることだったのに、初めから相手の心に寄り添えていなかった。大きな失敗でした」
この挫折から救ってくれたのは創業者と上司だった。悩みをじっくり聞いた上で、組織のまとめ方についてさまざまなアドバイスをくれたのだ。この時に言われた「あなたは木を見て森を見ずだね」という言葉は、今も大切にしているという。できないスタッフ1人、未熟な点1つを見るのではなく、店全体の成長を考えていきなさい──。これ以降、石田さんの意識は大きく変わった。