全国に料理教室を展開する「ABCクッキングスタジオ」で、その運営やスタッフ育成を担う石田珠美さん。2児の子育てと両立しながらのキャリアは、まさに山あり谷あり。たびたびの挫折をなぜ力に変えられたのか──。

楽しそうに働くスタッフの姿に憧れて

ABC Cooking Studio 執行役員 石田 珠美さん
ABC Cooking Studio 執行役員 石田 珠美さん(撮影=小林久井)

料理やお菓子のおいしそうな香りが漂う中、たくさんの生徒がキッチンを囲んで笑い合っている。お揃いのエプロンをつけたスタッフも笑顔できびきびと働いていて、皆とても楽しそうだ。

ABCクッキングスタジオは、国内に125、海外に38ものスタジオを展開する料理教室。生徒数は国内外で約145万人にものぼり、料理やパン、ケーキづくりを学びたい人を中心に人気を集めている。

石田珠美さんは、このスタジオ運営事業の担い手の一人。西日本を中心に約60店舗を統括しており、「現場の悩みや課題を肌で感じたいから」と、各スタジオを忙しく飛び回っている。

「スタジオはお客様ともっとも近くで接することができる場。今何が求められているのか、今後何が求められていくのかを知ろうと思ったら、直接現場へ行くのが一番なんです。そこで聞きとったスタッフの声を会社に届けるのも、私の大事な仕事ですね」

ABCクッキングスタジオとの出会いは25年前。生徒として料理教室に入会したのが始まりだった。当時、銀行の一般職として働きつつも、仕事にやりがいも目標も見いだせずにいた石田さん。一方、教室のスタッフはいつも楽しそうに働いていて、キラキラ輝いて見えたという。

「私もこんな風に働きたい」と憧れが募り、銀行を辞めて地元の名古屋店に契約社員として入社。最初は結婚までの腰掛のつもりだったそうだが、1年後、実際に結婚した時にはすっかり仕事に夢中になっていた。