転勤の内示を受ける人が増える時期が来た。最近では、転勤を断りたい人が増えている。優秀な社員の離職を防ぐため、画期的な制度を整備する企業も出てきている――。
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理不尽な転勤辞令、なぜ「問題なし」と言い切れるのか

人事異動の時期が近づいているが、中には遠方への「転勤」の辞令を受ける人もいるだろう。実は昨年の同じ時期に転勤をめぐる2つの騒動が大きく報道された。

化学メーカーのカネカの男性社員が3月末から4週間の育児休業を取得し、復帰直後に関西への転勤を命じられた。男性が時期の変更を求めたが、会社は応じず、退職に追い込まれたことが妻のSNSで明らかになり、大きな話題となった。

もう一つは、NEC子会社の50代の父子家庭の男性社員が、高齢の母親と病気の子どもを抱えていることなどを理由に転勤を拒否。4月中旬に懲戒解雇され、解雇無効を訴え、提訴したことも報じられた。ネット上では会社を非難する声が相次いだが、両社とも「会社の対応は適切で問題はなかった」と答えている。

なぜ問題はなかったと言い切ることができるのか。通常の人事異動と違い、夫ないし妻が転居を伴う転勤をすれば住居の問題や子どもの学校の問題など家族生活にも大きな影響を与える。一見、理不尽な対応のように思えるが、日本の判例では転勤について会社側に大きな裁量を認めているからだ。