働き盛りや子育て世代の女性に多い、片頭痛
次に年代分布を見ると、30代が圧倒的に多く、次いで40代と働き盛りの年代に多く発症していることがわかる。さらに女性は男性の2~3倍も有病率が高い。つまり、仕事も子育ても忙しい世代の女性に片頭痛持ちが多いということ。
驚くのはこれだけ症状を抱えている人が多いにもかかわらず、92%もの人が痛みをガマンしながら仕事や家事を継続しているということ。富士通クリニック頭痛外来担当の五十嵐久佳先生が行ったインターネット調査によると、耐えられないほどではないからと、69.4%の人が医療機関を受診したことがないという。
周囲からは「頭痛ぐらいでオーバーだ」「精神的なものだ」とレッテルを張られることも少なくなく、本人も「頭痛くらいで会社を休めない」「周りの人に迷惑をかけたくない」と痛みを我慢したり、鎮痛剤を服用して仕事や家事をしている状態なのだ。鎮痛剤の服用過多で胃痛を伴う患者も少なくないという。
では、本当にガマンできるぐらいの痛みなのかというと、先のインターネット調査では、痛みの認識が出産に次いで高く、4万人対象の疫学調査では3分の1もの人が寝込むほどの支障を訴えている。
仕事を欠勤したり、出勤をしても職務能力が著しく低下したり、職務が遂行できない時間や、仕事の質・量の低下などが報告されていて、片頭痛が引き起こす損失は、全年齢の日本人女性において、4週間で一人あたり7万円以上にも上るといわれている。症状がひどくなると、めまいにより座っていても意識が飛ぶ、まっすぐに歩けない、一人での入浴ができないなど、日常生活さえ困難になることもあるのだ。
2015年にWHOが発表した障害度は、神経疾患の中では脳卒中に次いで第2位となっていて、欧米ではすでに片頭痛が仕事を休む理由として認知されている。日本は片頭痛の認識が遅れていると言っても過言ではないだろう。
いざ医療機関に行っても、情報共有や医師の認識不足などから、満足な診断・治療を受けられないこともあるという。頭痛外来を設置している病院も増えてきたが、その数はまだまだ少ない。そもそも何科を受診したらいいのかという患者も多いという。埼玉国際頭痛センターでセンター長を務める坂井文彦医師は「できれば神経内科や脳外科を受診するといいでしょう」と話す(医療機関情報はこちらを参照)。