新型コロナウイルスの流行でマスクが品薄状態になるなか、今年も花粉症のシーズンが到来した。最新花粉情報とともに、これまで知られていなかった大気汚染と花粉の関係についてお届けする。
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花粉は水分を含むと膨張して破裂する

今年の花粉飛散量は九州から関東甲信にかけて例年や前年よりも少ないという予想だ。天候でも飛散量が変動するため、天気予報でその日の花粉情報をチェックしている人は多いだろう。しかし、それはあまり意味がないかもしれない。

大気汚染を研究する埼玉大学大学院理工学研究科の王 青躍(おう・せいよう)教授によると、花粉症は花粉の粒子そのものではなく、花粉の粒子の表面や内側に存在しているアレルゲン物質が引き起こすという。

通常、スギ花粉の大きさは直径30μm(=0.03mm)とPM2.5の約10倍の大きさだが、花粉が大気中の水分を含むとさらに大きく膨張するそうだ。そこにPM2.5や黄砂といった大気汚染物質が触れると破裂を起こし、花粉の内部や表面についているアレルゲン物質が放出される。花粉アレルゲンは微細で通常の花粉対策用マスクでは防ぐことができず、PM2.5対応マスクでないと防御が難しい。そのため、人間の気管支や肺、肺の奥深くの肺胞まで入り込んでしまうこともあるという。

「たとえ少量でも、微粒子になればなるほどアレルギー反応は起こりやすくなります。今年の花粉の飛散量が例年より少なくても決して油断はできません」(王先生)

天気予報でわかるのはあくまで花粉の飛散量であり、花粉の破裂によって放出されるアレルゲン物質の量は知ることができない。花粉の飛散量に加えて、PM2.5や黄砂などで起こる大気汚染の状況を加味してとらえる必要がありそうだ。また、雨の日の翌日に花粉症の症状が悪化するのは、水分を含んだ花粉が破裂してアレルゲンが放出されるため。雨の日の翌日は特に気をつけたい。