※本稿は、和田秀樹『患者の壁 [ベルトコンベア医療]には乗るな!』(エイチアンドアイ)の一部を再編集したものです。
「法定健診」と「任意健診」に分けられる健康診断
日本の健康診断の目的とは何か。その法的な根拠はどこにあるのでしょうか。
「健康診断」は「健診」とも呼ばれ、体の健康状態を総合的に調べる検査のこと。病気の早期発見や予防を目的としています。健康な人が受ける診察や検査のことを指しています。
それに対して「検診」は、特定の病気の早期発見を目的として、集団で行なわれる検査のことです。「健診」と「検診」には厳密な違いがあります。
健診は就職や入学に際して、あるいは職場や学校で定期的に行なわれているので、誰もが経験しているはずです。血圧測定や身体計測から、血液検査、尿検査、心電図検査、胸部X線検査などが行なわれます。中高年になると、さらにがん検診などが入ってきます。
これらの健康診断は、法律で実施が義務付けられた「法定健診」と、個人が任意で受ける「任意健診」の二つに分けられます。
法定健診には、定期健康診断や雇用時健康診断などがあり、「労働安全衛生法」などにより、年1回以上の実施が義務付けられています。事業者(企業など)は労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない、と法律に定められています。労働者ではなく、経営者側に義務があるわけです。違反者には罰則も課せられます。
任意健診には、人間ドックやがん検診があり、任意なので自分の意思で受けるものです。
がん検診の対象となっているがんは、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんです。受けるかどうかは任意となっているので、健康診断の際は案内が配布されるだけです。
「健診を受けなさい」を断われない日本人
また、幼稚園から大学までの学校には「学校保健安全法」があり、各学年で定期的に、児童・生徒・学生等の健康診断を行なわなければならない、と定められています。
高齢者には、「高齢者の医療の確保に関する法律」などがあります。「特定健康診断(メタボ健診)」は、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の予防や早期発見を目的とし、「高齢者の医療の確保に関する法律」によって行なわれているものです。対象は公的医療保険に加入している40歳から74歳までの中高年や高齢者の方々。日本では法律により、すべての人が公的医療保険に加入しています。つまり、メタボ健診は中年以降の日本人ほとんどが対象ということになります。
職場などで行なわれてきた健康診断との違いは不明確で、なぜこのメタボ健診が行なわれているのかも、いまだ不明です。

ほかにも、「健康増進法」「感染症法」など、健康診断に関する法律はさまざまです。先ほどのがん検診は、「健康増進法」に基づいて市町村が実施する健康増進事業です。厚生労働省が定める「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき行なわれています。
このように日本では、会社で「健康診断を受けなさい」と言われれば断われないような状況になっています。病院へ行って、医者から検査をすすめられれば受けるしかないのです。