頭痛の種類は大きく分けると3つ。自分の頭痛タイプを知る
頭痛には風邪をはじめとした他の病気の症状として現れる頭痛と、頭痛そのものが病気である慢性頭痛があり、この慢性頭痛にも大きく3つに分類されている。
1 片頭痛
月に数回、頭の片側の血管が脈を打つようにズキンズキンと痛む。
動くのがつらく、吐き気や嘔吐を伴ったり、光や音で痛みを感じることもある。
2 緊張型頭痛
ほぼ毎日、筋肉が収縮するような、締め付けられるような痛みを感じる。
肩や首が凝り、ふわふわとした目眩を感じるが、運動など体を動かすと痛みが紛れる。
3 群発頭痛
目の奥を殴られたような強い痛みが走る。年数回だが、1カ月続くことも。
アルコールで誘発され、目の充血や涙を伴う。じっとしていることもできない。
4万人を対象にした全国調査によると、22.3%の人が緊張型頭痛を、8.4%の人が片頭痛をもっており、これは日本の人口に換算すると約840万人もの人が片頭痛を抱えているということになる。
働き盛りや子育て世代の女性に多い、片頭痛
次に年代分布を見ると、30代が圧倒的に多く、次いで40代と働き盛りの年代に多く発症していることがわかる。さらに女性は男性の2~3倍も有病率が高い。つまり、仕事も子育ても忙しい世代の女性に片頭痛持ちが多いということ。
驚くのはこれだけ症状を抱えている人が多いにもかかわらず、92%もの人が痛みをガマンしながら仕事や家事を継続しているということ。富士通クリニック頭痛外来担当の五十嵐久佳先生が行ったインターネット調査によると、耐えられないほどではないからと、69.4%の人が医療機関を受診したことがないという。
周囲からは「頭痛ぐらいでオーバーだ」「精神的なものだ」とレッテルを張られることも少なくなく、本人も「頭痛くらいで会社を休めない」「周りの人に迷惑をかけたくない」と痛みを我慢したり、鎮痛剤を服用して仕事や家事をしている状態なのだ。鎮痛剤の服用過多で胃痛を伴う患者も少なくないという。
では、本当にガマンできるぐらいの痛みなのかというと、先のインターネット調査では、痛みの認識が出産に次いで高く、4万人対象の疫学調査では3分の1もの人が寝込むほどの支障を訴えている。
仕事を欠勤したり、出勤をしても職務能力が著しく低下したり、職務が遂行できない時間や、仕事の質・量の低下などが報告されていて、片頭痛が引き起こす損失は、全年齢の日本人女性において、4週間で一人あたり7万円以上にも上るといわれている。症状がひどくなると、めまいにより座っていても意識が飛ぶ、まっすぐに歩けない、一人での入浴ができないなど、日常生活さえ困難になることもあるのだ。
2015年にWHOが発表した障害度は、神経疾患の中では脳卒中に次いで第2位となっていて、欧米ではすでに片頭痛が仕事を休む理由として認知されている。日本は片頭痛の認識が遅れていると言っても過言ではないだろう。
いざ医療機関に行っても、情報共有や医師の認識不足などから、満足な診断・治療を受けられないこともあるという。頭痛外来を設置している病院も増えてきたが、その数はまだまだ少ない。そもそも何科を受診したらいいのかという患者も多いという。埼玉国際頭痛センターでセンター長を務める坂井文彦医師は「できれば神経内科や脳外科を受診するといいでしょう」と話す(医療機関情報はこちらを参照)。
自分の頭痛を記録することで、受診もスムーズに
片頭痛は主観的な症状であるのも、医療機関への受診をためらう一因といえるだろう。痛みがあるときは都合が悪く、いざ病院に行くときには症状が出ていないという場合もある。
そこでまずは自己診断をしてみるのもひとつの手。過去3カ月以内の頭痛について、次の項目をチェックしてみよう。
□ なかった □ まれ □ ときどき □ 半分以上
2.頭痛に伴って吐き気がした、胃がムカムカすることがどのくらいありましたか?
□ なかった □ まれ □ ときどき □ 半分以上
3.頭痛に伴って普段気にならない程度の光が眩しく感じることがどのくらいありましたか?
□ なかった □ まれ □ ときどき □ 半分以上
4.頭痛に伴って臭いが嫌だと感じることがどのくらいありましたか?
□ なかった □ まれ □ ときどき □ 半分以上
以上の質問で、2項目以上で「ときどき」あるいは「半分以上」と回答した場合、90%以上の確率で片頭痛であるという。
*出典:渡邊由佳、五十嵐久佳「特集 女性の痛み 3片頭痛」WHITE Vol4 No.2 2016 9
最近では日本頭痛学会のホームページから、発症した日や痛みの程度、日常生活への影響度などを書き込める「頭痛ダイアリー」を無料でダウンロードできる(ダウンロード先)。これに自分の頭痛の症状などを書き込んでおけば、医療機関を受診したときに診断材料になる。
片頭痛は、適切な薬物治療によって発症の頻度や症状を軽減することは可能だという。
また、毎日適度な運動を取り入れたり、空腹をガマンしない、飲酒を控えたりするなどで、片頭痛が改善したという報告もある。これは生体のリズムが安定したことによりセロトニンの分泌が活性化したことが要因ではないかと考えられている。
とはいえ、ストレスやホルモンバランス、天候や食事など、片頭痛の誘引因子は、いまだにすべてが判明しているわけではない。だからこそ自分自身で片頭痛の実態をきちんと把握し、周囲への理解を求めることが重要な一歩となるのだ。