トップが連携し、世の中を変えていく

【白河】澤田さんは、女性役員の比率を30%にすることを目指した企業トップによるグローバルなキャンペーン「30%クラブ」に参加していらっしゃいます。

花王 澤田道隆社長

【澤田】非常に良いキャンペーンだと思います。女性活躍だけにとどまらず、もっとさまざまな分野で、自社だけでなく世の中全体を変えていくための取り組みを増やすべきだと思います。

今の環境問題や社会問題を考えると、1社だけ、業界団体だけで解決するのは難しいことばかりです。相当グローバルに連携しなくてはならないでしょう。例えば「ダボス会議ジャパン」のようなイメージでしょうか。意識の高い人、企業や各界のトップたちが集まって議論し、その結果を各社に持ち帰ったり、連携したりするのがいいと思います。

【白河】花王は、1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発表された、「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World」で、評価対象となった7395社の中からトップ100に選ばれました。選定されたのは2年連続です。

【澤田】昨年2019年に、ESG(環境・社会・ガバナンス)視点での“よきモノづくり”を目指したESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を発表していますが、そうした姿勢を評価してもらったのだと思います。しかし、まだその成果は見てもらっていませんから、ここからがスタートだと思っています。売上や利益だけが会社の価値ではないという意識でESGに取り組んでいます。

多様性が利益につながることを見せるのが経営者の役割

【白河】とはいえ、ROE(自己資本利益率)は17.6%と非常に高く、高い業績も維持されていて、業績とESG経営を両立されているように見えます。

【澤田】「ESGに舵を切ったから業績を落とした」ということにはしたくありませんから。女性活躍も同じです。こうした活動が企業価値向上につながり、最終的には利益ある活動につながり、得た利益を再びこうした活動にフィードバックすべきでしょう。先日の30%クラブでも、同じ議論になりました。多様性を活かすことが生産性向上や利益につながることを見せるのが、経営者の役割だと思います。