重圧から救ってくれた息子の言葉
キャリアの中でずっと目指してきたのは、40歳までに人事本部長になることだった。思いが叶った時は心底うれしかったそうだが、昇格を知らされた1週間後、人事本部長になると自動的に取締役の肩書きがつくと聞いてびっくり。驚きとプレッシャーで、帰宅してから「私に取締役なんて無理」と大泣きした。
「そうしたら、当時9歳だった息子が『ママらしくやればいいじゃん、いつも人にそう言ってるじゃん』ってサラッと言ったんですよ。ハッとしました」
「自分らしく」は、島田さんが昔から大切にしてきた言葉。なのに、役員とはこうあるべきという思い込みに振り回されて、自分の軸を見失ってしまっていた。それに気づかせてくれた息子には、今も「ママはあの言葉があったから今があるんだよ」と伝えているという。
ところが、いざ役員会に出てみると次の壁にぶつかった。そんなことも知らないのかと思われるのが怖くて、思うように発言できなかったのだ。言えば実現できると信じて、何事にも本音でぶつかってきたのに「初めてビビっちゃった」と笑いながら振り返る。
だが、ほどなくして「こんなの私らしくない」と気づいた。経営層としてはまだ未熟でも、意見があれば率直に言えばいい、わからないことは聞けばいい。それが自分らしい役員像だと思えるようになり、スッと気が楽になった。
「これから役員になる女性には、どうかリラックスしてと伝えたいですね。周りのおじさんたちにのまれないで(笑)、自分が自分らしく、ハッピーでいられる道を探ってほしいと思います」
現在は、働く場所の選択肢をさらに広げた「地域 de WAA」に取り組んでいる。すでに、全国6つの地域の施設を社員のコワーキングスペースとして活用する仕組みをスタートさせており、将来的には自治体との人材交流や地域の課題解決への貢献も目指す。
社員一人ひとりが楽しく、いつでもどこでも自分らしく働けるように。島田さんの思いは企業や地域の枠を超えて、大きな広がりを見せ始めている。
■役員の素顔に迫るQ&A
Q 好きな言葉
Be yourself.(自分らしくあれ)
Q 趣味
マイクを持つこと、地域活動
「カラオケや人前で喋ることが大好き。地域活動は趣味から『地域 de WAA』に発展しました」
Q 愛読書
『ティール組織』フレデリック・ラルー
『アルケミスト』パウロ・コエーリョ
Q Favorite Item
ノート、スマホケース「スケジュール帳とは別に、学びや気づきのメモ用ノートを持ち歩いています。スマホケースは『Do what you love(自分の好きなことをやりなさい)』のメッセージ入り」
文=辻村 洋子 撮影=徳山喜行
1996年、慶応義塾大学卒業。パソナ、日本ゼネラル・エレクトリックを経て2008年ユニリーバに入社。営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターなどを歴任し、13年取締役人事本部長に就任。14年より現職。高校一年生の息子を持つ一児の母親。