イクメンはものすごく有利な「投資」

M字カーブが急速に解消されつつあるとしても、いまだに女性の雇用者のうちパートなど非正規の割合は55%を占め、男性の2倍になります。主婦の再就職先は「4C」──ケアリング(caring/介護職など)、クリーニング(cleaning/清掃)、クッキング(cooking/飲食業)、キャッシャー(cashier/レジ係)がほとんどです。

橘玲『2億円と専業主婦』(マガジンハウス)

女性管理職の比率も、日本は2016年時点で12.9%と、アメリカの43.8%、フランスの32.9%と比べてきわだって低く、上場企業3490社のうち女性役員のいない会社は60%を超えています(日経新聞2019年7月30日朝刊)。

その一方で、「働き方改革」で同一労働同一賃金の原則が徹底されるようになったことで、たとえ非正規でも正社員と同じ仕事をしていれば待遇で差をつけることは違法になりました。女性が活躍できない会社は有能な人材を使い捨てているのですから、早晩、市場から淘汰され消えていくはずです。「欧米から20~30年遅れている」といわれた日本も、こうして「ふつうの国」になっていくのでしょう。

妻が働き続ければ夫は残業を断れる

ここで大事なポイントは、妻が正社員として働きつづけて2億円の生涯賃金を獲得できるなら、夫は残業を断ったり、より働き方の融通がきく部署に異動するか転職したりして収入が減っても、じゅうぶん元が取れるということです。

「専業主婦モデル」というのは、結婚した女性が強制的に会社を辞めさせられた時代の名残です。経済合理的に考えるならば、どのようなケースでも、夫は家事・育児に協力して(イクメンになって)妻が正社員の仕事をつづけられるようにした方が圧倒的に有利であることは明らかです。

「日本は外国とはちがう」という意見のひともいるかもしれませんが、これは歴史や文化の話ではありません。「だれも1億円や2億円も損したくない」という単純な理由から、先進国ではどこも共働きが当たり前になっているのです。

もっとも、「自分が2億円余分に稼ぐから、妻には専業主婦でいてほしい」というのなら、もちろん本人の自由ですが。

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橘 玲(たちばな・あきら)
作家

1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。05年の『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補に。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)など多数。