子育てが一段落して働いても1億4000万円の損

専業主婦は2億円損をする』へのより説得力のある批判としては、「子育てが一段落してから働く主婦が増えているのだから、専業主婦の生涯賃金をゼロで計算するのはおかしい」があります。これはたしかにそのとおりですが、子育て後に働くことでいったいどれだけ「損」が減るのでしょうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kohei_hara)

ニッセイ基礎研究所(久我尚子主任研究員)の試算では、大卒女性が2度の出産を経て正社員として働き続けるとして、育休や時短を利用しても生涯所得は2億円を超えますが、第1子出産後に退職し、第2子の子育てが落ち着いてからパートで再就職した場合の生涯所得は6000万円にとどまります(日経新聞2018年2月23日朝刊)。

ゼロ(働かない)と6000万円(パートで働く)ではもちろん大きなちがいですが、だからといって1億4000万円もの「損」を「仕方ない」と受け入れるひとがどれだけいるでしょうか。日本の会社では正社員と非正規は「身分」のちがいなので、同じように働いたとしても理不尽なまでの収入格差が生じるのです。

M字カーブは解消されつつある

もちろんこんなことは、当の女性がいちばんよくわかっています。

2019年6月の労働力調査によると、女性の就業者数がはじめて3000万人を突破し、就業者全体の44.5%を占めました。日本の雇用状況の特徴は、出産や育児などで女性がいったん仕事を辞め、30代を中心に就業率が下がる「M字カーブ」だとされてきましたが、35~39歳の就業率は76.7%と20年前と比べて15.2%も上がっています(日経新聞2019年7月30日朝刊)。

欧米先進国では女性の就業者の割合は40%台後半、30代女性の就業率は80%前後とされますから、日本でも女性の働き方が急速に「グローバルスタンダード」に近づいていることがわかります。

働く女性は、今では出産で「非正規に落ちる」ことによって1億円以上も損をすることに気づいているのです。