FPの肩書に騙されてはいけない
金融機関に限らず、どんな商売でも自分のところの商品を売るのが仕事です。そういう立場の人に他のお店で売っている商品との比較や評価を公正に期待してもそれは無理というものです。たとえ名刺に「FP(ファイナンシャル・プランナー)資格保有者」と書いてあってもほとんど意味はありません。金融機関は自社の社員にFPの資格を取得させて「資産のトータルアドバイザー」みたいな名称をつけていることが多いですが、これは単なる「権威付け効果」です。そういう肩書は、いかにも専門家っぽく見せるための手段にすぎないのです。
投資や資産運用の基本は自分で本を読んだり、少しずつ体験したりして勉強することです。自己責任なのですから、人に頼ることは禁物です。とはいえ、自分で勉強しただけではどうしてもわからないことや参考として意見を聞いてみたいということであれば、金融機関の社員ではない、独立したFP(ファイナンシャル・プランナー)にきちんとお金を払って相談すべきでしょう。ただ、その場合もFPなら誰でも良いというわけではありません。判断すべき重要な点が二つあります。
相談していいFPの見極め方
まず一つ目は収入の中心が顧客からの相談料であるかどうかということです。FPの人の中には、主に金融商品を販売してその金融機関からコミッションをもらうことを収入の中心にしている人も多いのです。FPが商品を販売してはいけないということはありませんが、商品販売が収入の中心ということであれば、金融機関とほとんど変わらないということになります。
次にFPとひとくちに言ってもそのカバーする範囲は広く、それぞれに自分の得意とする分野があります。お医者さんでも外科や内科、眼科や産婦人科があるように、資産運用や投資については、やはりその分野に詳しいFPでないとだめでしょう。特に実際に自分の資産運用や投資について、個別具体的な銘柄や個別商品についてのアドバイスを受けたいのであれば、「投資助言業」の登録をしているFPに相談をすべきです。
前述した「金融商品を販売して、その金融機関からコミッションを受け取っている」というFPの多くは証券仲介業や保険の代理店をやっています。それは別に悪いことでもなんでもありませんが、少なくとも相談する相手が販売の一端を担っているということはきちんと理解したうえで話を聞くべきでしょう。人間ですから絶対にバイアスがかからないとは言い切れないからです。ましてや金融機関という「販売」を本業としているところに「何を買えばいいか?」の相談をするのは禁物だと言っていいでしょう。
くれぐれも金融機関は「運用や投資のプロ」ではなく「金融商品販売のプロ」だということは忘れないようにしておいてください。
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1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。