ワーク・ライフ・ブレンド
浜田さんがトップとなって以来、そんな社風を一新すべく“日本一働きやすい会社”、そして“働きがいのある会社”を目指した。18年からは仕事もプライベートも分けずに考える“ワーク・ライフ・ブレンド”というコンセプトを加えた。
たとえば1日1時間以上出勤すればOKという「スーパーフレックス制度」や週1回の在宅勤務制度を活用して、自分の裁量で柔軟に働く。オフィスにカフェをもうけて、そこでコーヒーを飲んだり、本を読んだり、夕方にはお酒を飲んでリフレッシュしてもいい。畳敷きのスペースで仕事をしたり、あおむけに寝転んでみたり。リラックスした気分でいると、ふと良いアイデアが降りてきたりもする。そんなときにメールなどで仲間とシェアすれば、仕事の生産性も上がる。このようにプライべートも仕事も、いい具合にブレンドさせるのが同社が目指す働き方の1つの方向性だ。
しかし大胆な改革は、保守的な社員からの反発が想像される。昭和型の企業だったARUHIでは「いかに自分の生産性を上げるか」という意識が低い社員との軋轢もあったのではないだろうか。半面、積極的で優秀な社員にとっては自身の能力を生かすチャンスでもある。同社ではもともと女性社員の割合が多く、その中でも有能な女性たちが頭角を現していった。
その1人が人事部シニアアソシエイトの大友麻衣さん(30代、入社12年目)。彼女が人事部で行ってきたここ数年の改革業務は、主に「スーパーフレックス制度や在宅勤務制度などの企画と実施。さらには育休中の社員の不安を取り除くようなフォローアップを考え、スムーズに復職できる対策」とのこと。同社では最長で3年間の育休を取得できるが、続けて出産すると育休が長くなる。そうなると会社への復職が不安になるという声があった。
「育休中に会社の動きが把握できないと不安につながるので、これを社内イントラで閲覧できるようにすることで改善しました。さらに18年には新しいオフィスへの引っ越しがあり、休んでいる間に自分の席がなくならないかと、ますます動揺する人もいたようです。そこで、育休者に向けて豪華なお弁当付きのオフィス見学ツアーを企画したのです」
見学ツアーと同時に、育児中の先輩社員を交えて、仕事と育児の両立への不安や疑問についてざっくばらんに話し合いをする場ももうけた。大友さん自身も2回の育休を経験したが、自分が置いてきぼりにされたような思いを抱えた経験がある。その経験が生きているのだろう。