終わりがあるから頑張れる

精神科医として思うのは、自分を犠牲にしてまで付き合うべき人や仕事は、この世の中には1つもないということ。

すでにお話ししたように、物理的な距離が取れればいいのですが、実際の会社では難しいことも多いでしょう。

そのような時にぜひ取り入れていただきたいのが、「期間限定の思考」です。

どんなにつらいことであっても、終わりが見えているのとそうでないのとでは、心の持ちようは全く違ってきます。

産業医として、長時間残業をしている人と面談することが多々あるのですが、その中にも、「今月は大変でしたが、来月の中旬には業務が一段落するのがわかっているので頑張れます」とおっしゃる人がたくさんいます。

その一方で、「負担がすごいし、仕事がいつ終わるかわからなくて……。毎日、仕事のことで頭がいっぱいで、夜も眠れなくなってきています」と話す人も。

終わりがわかっているかそうでないかによって、プレッシャーの感じ方はこれほど、違ってくるのです。

これは人間関係にも応用できます。

過去に、私が産業医としてやりとりしてきた内容を例に見ていきましょう。

期間限定が生み出す「余裕」

Sさん:「前回もお話ししましたが、上司と合わなくて、もうしんどいです……」
私:「そうですか……。面談後に、配置転換を検討するように会社にはお伝えしたのですが……」
S:「小さい会社なので、現実的には部署を移動させるのは難しいという結果でした」
:「そうでしたか。その上司は、パワハラっぽい人でしたよね」
S:「はい。高圧的な人なので合わないですね。このままだと自分の精神状態がおかしくなりそうなので、早目の転職も考えます……」
:「そうですか……。相手を変えるのは難しいですよね」
S:「先生、前にアドバイスをくれましたよね。自分を変えたほうがいいと。でも、そんな簡単にできません」
:「では、諦めましょう。開き直りも大事です」
S:「えっ!?」
:「合わないものは合わないものです。さて、どこまで我慢できるかです」
S:「どういうことですか?」
:「期間限定にしましょう。今の状態は、ゴールが見えないまま、過酷なマラソンを行っている状態です。このままなら、いつか体調を壊すのが目に見えています。逃げられる体力・気力があるうちに逃げる、という発想は大切です」
S:「そうですよね……。期限があれば頑張れそうです。2年以内に2回は定期の異動のチャンスがあるので、そこにかけてみます。その2回で上司か私が異動にならなかったら、転職しようと思います」
:「そのような考えでいいと思います。世の中にはたくさんの会社があり、Sさんは、この会社の今のポジションに、ずっとしがみつく理由はありませんからね。自分の体を壊してまで続けるような仕事は、この世の中にありませんよ」
S:「ありがとうございます。なんかスッキリしました。期間限定で頑張ります!」