女性上司に最も厳しいのは女性部下
ここからは、部下や上司、同僚から女性上司が実際にどう見られているかを見ていきましょう。「女性管理職として許せないと思う要素」として1位の「いざというときに部下を守らない」は、性差関係なく上司に求められる能力不足の指摘です。
上司の役割とは、背伸びが必要な仕事を「部下に任せる」こと、しかし丸投げではなく「成功するように応援する」こと、結果の成否にかかわらず「振り返らせて責任をとる」ことの3つです。男性より女性のほうが部下を守らない上司を「許せない」割合が多いのですが、男性には縦社会の中間管理職の難しさが見えているからかもしれません。
2位の「感情のコントロールができない」については、「許せない女性上司」の自由回答にもたくさんの意見が寄せられました。実際の企業研修でも、男女とも部下の人たちから「男性に比べて女性上司は感情が外に出やすく、すぐ怒る」とか、「機嫌の良い悪いがわかりにくく、対応に苦慮する」という声が上がります。また男性幹部でも、「部下にあたる女性管理職がチームメンバーとやり取りをしている様子を見ていると、ギクシャクするケースがあり、そうしたときには女性管理職の気持ちのケアの必要性を感じる」と案じている方もいます。
身だしなみについても、男性より女性のほうが厳しい意見が出ました。女性管理職自身も身だしなみには敏感で、「管理職になって増えた出費」の自由回答を集計したところ、ダントツは管理職にふさわしい「服飾費」でした。「プチプラ服は着られなくなった」「服のブランドをワンランク上げた」などの回答がありました。
今の日本企業の仕組みは男性がつくってきました。女性管理職からすると自分より上はいわゆる“オールド・ボーイズ・ネットワーク”なので、男性社会で上手に生きていくすべを考えますから、接し方だけでなく身だしなみでも男性目線を意識する女性もいます。ただ、それが女性の部下から見ると「上(男性)にこびている女性上司は嫌だし見苦しい」となることもある。男性より女性のほうが全体的に厳しい意見なのは、そのためでしょう。
決めつけてはいけませんが、傾向としてあるのが、女性のほうが職場の中の狭い範囲での横の関係に敏感で、男性は会社の中の縦の人間関係、つまり組織のヒエラルキーに敏感です。アンケート結果には、この違いが出てきているのでしょう。
令和のマネジメントは「共感・支援型」の女性が有利
「女性管理職に備わっていてほしい要素」では、「責任をとる覚悟」「公平」が上位に、また「ロールモデルになりそうな女性管理職像」は「自己管理」「決断力」が上位でした。
管理職になると自分を動かす仕事ではなく、人を動かすことが仕事になり、さらに上のステージになれば組織を動かすことが仕事になります。多くの選択肢から周囲の意見も聞きつつ、やることを決断する。出した指示に納得を得られなければ部下も組織も動きません。もしその決断が間違ったときには責任をとる。そして次に向かう。これは男女問わず管理職に必須の要素だと思います。