ただ、嫉妬する男性部下や、その不満に悩む男性役員たちが自覚すべきなのは、たまたま男女の役割分業が進んだ昭和から平成半ばの約50年間、男性が優遇されていたということ。それを棚に上げて、男性が冷や飯を食わされていると考えるのは、お門違いだと思います。

実際、「自分が男性管理職だったらよかったのにと感じたこと」の自由回答でも、「昇格試験を受けて管理職ポストについたのに、社内に『女性活躍の機運があるからだ』という雰囲気がある」「男性だったらもっと早く昇格できた」といった回答がありました。裏返せば女性管理職の方々には、「(追い風が吹いているのは確かだけれども)自分はきちんと努力して管理職になった」という自負があるわけですね。

私が営む会社はさまざまな企業で管理職研修などを行っていますが、女性の場合、管理職になる前は男性社会に引き気味で「あまりなりたくない」という方も多いです。でも、実際になってみると視界が変わるんですね。大きな仕事ができたり、決裁権を持てたり、部下を育てたりと、管理職の仕事の楽しさがわかってきます。「管理職を引き受けた理由」、「管理職になって良かったこと」の質問で、それぞれ最も多かった回答が「やりがいを感じたかったから」「新たなステージに上がった」というのは、その裏付けと言えるでしょう。

管理職になって難しいと感じたこと

「管理職になって難しいと感じたこと」で多い「働き方に対して意識差のある部下のマネジメント」「部下の叱り方」は、男性管理職からもよく聞く悩みです。個人差はあるものの、部下それぞれに合ったマネジメントをするのは、細かな配慮ができる女性管理職のほうがこれまで苦労してきたぶん部下の気持ちがわかり、得意な傾向にあると思います。

一方で、「自分のプライベートとの両立」が難しいと感じている方が多いように、部下を個別にコーチングすればするほど、ますます自分の時間はなくなり、疲れやストレスがたまっていきます。最初から「10頼んだ仕事が10できないとダメ」と考えるのではなく、「10のうち5できて良かったね」と、スモールゴールを設定して成功体験を繰り返させ、5を積み上げていくチームづくりをするなど、チーム全体がストレスを感じない仕事の進め方をしていかないと部下は育ちませんし、何より管理職自身が疲弊してしまいます。

ただでさえ、働き方改革の影響で、短時間で生産性を上げて成果を出さなければならなくなりました。仕事を部下にやらせると残業になってしまうからと、自分が肩代わりしている管理職も増えています。

今は「自分の時間が減るくらいなら出世したくない」という若手も少なくありません。管理職になっても部下に仕事を振れないから自分で行っている、プライベートを犠牲にして働く上司の大変な様子を見ると、若手はいっそう「ああはなりたくない」と思いますし、悪循環ですね。