タピオカは「定番」になれるのか

「消費者はどんどん変化する」という言葉があります。長年、取材を続けてきた立場では、「時代とともに消費者意識が変わる」と「同じ消費者が年齢を重ねて意識が変わる」の2つがあると感じます。ここでは後者の話をしましょう。

ファッションがその代表で、容姿や体形の変化で若い頃の衣服が似合わなくなったりする。そうなると多くの人は、加齢とともに、少しずつ好みの服をシフトチェンジします。

飲食の場合もこの傾向が見られます。20代の頃は、カフェの新商品が気になっていた人も、例えばカロリーの高い商品には手を出さなくなる。女性たちに話を聞くと「健康面が心配」と「これまで楽しんだから、もういいかなという気持ち」だと言います。

「タピオカ=若い女性に人気」ですが、同じ消費者が「若い女性」でいられる期間は限られます。今後、定番商品になるには、世代交代を果たすか、消費世代を増やすかになります。

現在の爆発的ブームはいつか終わりますが、ブームによって間口は確実に広がります。その後、どんな立ち位置になるか。芸能界のアイドルでいえば中堅俳優としての道。野球の剛速球投手でいえば技巧派への道——のような転身です。

マーケティングの現場では「不易流行」という言葉も使われます。「不易」は時代を経ても変わらないもの、「流行」は時代とともに変わるもの。「おいしいドリンクやスイーツを味わいたい」が不易、「どの商品が人気か」は流行です。

2019年を代表するヒット商品として位置づけられた「タピオカ」は、どこが不易となり定番化していくのか。今後は、その点も注目したいと思います。

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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)、2024年9月26日に最新刊『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)を発売。