社内の猛反発にあった1人部長時代

まずは日経グループ会社や研修会社に電話をかけまくり、実施している研修や体系づくりの方法を聞いて回った。関連書籍も読みあさり、自社に合う手法を探し求めた。そうして得た知識をもとに、部長診断テストや次長研修、宿泊研修などを次々と企画。社内の反発は大きかったが、「絶対に社員や会社のためになるから」と熱心に説得を続けた。

実際に研修が始まると、反発していた人たちから「受けてよかった」という声が上がり始める。その翌年には30回以上の研修を実現して教育体系を確立。待望の部下も配属されるようになった。挫折感からスタートした“1人部長”の部署を、約2年で会社に欠かせない存在に育て上げたのだ。

「着任時、当時の社長が、『今は不満もあるだろうが、後できっと感謝する時がくる』と言ってくださったのが印象に残っています。本当にその通りで、2年後にはやってよかったと実感するようになりました」

伊藤さんが導入したABW推進の一環としてつくられたオフィス。いまやるべき仕事に対して、いつ・どの場所でやるのが最も効率がよいのかを社員が決めるスタイルになっている。(写真=オカムラ情報誌『bp』紹介記事より)

もちろん失敗もした。例えば、外部講師を招いてキャリア研修を実施した時のことだ。伊藤さんの声かけで、当日は20人ほどの参加者が集まった。ところが、そのうち半数はキャリアを考える研修には興味が持てなかったようで、中には明らかに「こんな話つまらない」というそぶりを見せる人もいた。

講師に対して失礼な上、参加者が斜に構えていたのでは研修を行う意味がない。以後は事前に、参加者が所属する部の長に根回しをするようになった。「今回の研修はこういう意義があってこう役に立つ。だから部下の背中を押してあげて」と説明して回ったのだ。研修の意義を直属の上司から聞けば、納得の度合いも違う。それからは、不機嫌な顔をする参加者はいなくなった。

研修を成功させるためとはいえ、各部署を回って話をするのは時間がかかるし気骨も折れる。それでも、これまでの経験から「直接話したり聞いたりすればたいていのことは解決する」と信じた。この信条は、後に本部長になった時に大きな力を発揮する。