国内外の証券・金融情報をリアルタイムで配信する金融情報サービス会社「QUICK(クイック)」。伊藤朋子さんは社歴30年以上の生え抜き社員で、長らく職場の業務改善や意識改革に取り組んできた。けれど最初の頃は、社内の反発や動かない現場に孤軍奮闘。いくつものピンチを乗り越えて身に付けた“組織を変えるすべ”とは?
撮影=ヒダキトモコ

初の女性取締役に女子から祝福の嵐

「社内で女性初の取締役になった時、真っ先に祝福してくれたのは女性社員たちでした。『女性が役員になってくれてうれしい』『ガラスの天井がなくなるなんてすごい』という声をもらって、本当に感動しました。さらに、今年2人目の女性取締役も誕生したんですよ」

こう語るのはQUICKの伊藤朋子さん。管理職時代に社員研修や組織活性化で成果を出し、次は全部署を対象に腕を振るってほしいと言われての就任だった。

就任後は、女性活躍のあかし「えるぼし星3つ」や健康経営優良企業を認定する「ホワイト500」などの取得に関わる。現在は専務取締役となり、社員が固定席を持たない「フリーアドレスとABW(Activity Based Working)の考え方」の導入や、人事制度改訂などを含めた働き方改革に取り組んでいる。

同社にはもともと男女平等の風土があり、自身も「女だから任せてもらえないんだ」と感じたことはなかったそう。入社したのは男女雇用機会均等法施行の数年前。4大卒女性が就職難だった時代にもかかわらず、同期入社は男女同数で、管理職への初昇進も同期の男性と同時だった。

こうした風土は経営トップの考え方によるところが大きいだろう。では、現場はどうか。もう20年以上前のことだが、伊藤さんは課長時代、育児のために定時退社するようになって初めて“男女の壁”を感じたという。