肌状態と気候などから毎回配合を調整

話を「オプチューン」に戻しましょう。オプチューンでレンタルできる専用マシンは、IoT技術を備えていて、様々なデータと連動する仕組み。

連動するデータは、ユーザーがスマートフォン(iPhone)にダウンロードした専用アプリを通じて、マシンへと送られます。そこに含まれるのは、ユーザー一人ひとりの「肌測定データ」や「睡眠データ」、そして気温・湿度などの「環境データ」など。

こうした膨大なデータと連動するからこそ、専用マシンは、そのときどきの気候やユーザー一人ひとりの状況に応じたスキンケア(保湿液)の配合(抽出パターンと抽出割合)を判断し、提供することができるのです。

「令和時代の女性は、明らかに忙しい。とくにお子さんがいらっしゃる方々は、規則的な生活を送りたくても難しいことが多いでしょう」と、資生堂ジャパン・次世代事業開発部の近藤美鈴さん。

そこで同社では、睡眠アプリを使った実証実験などで、女性たちの睡眠状況を調べてみたそうです。

アプリで自分のコンディションが一目瞭然

「すると週5日以上、規則的な睡眠を取れている人は、無自覚のうちに何度も目覚めるという、「無自覚の覚醒(浅い眠り)」が少ない傾向にありました」と近藤さん。逆に、何らかの事情で不規則な睡眠が多い女性は、無自覚の覚醒が約2倍も起こっていたそうです。

そこで、オプチューンのアプリにも睡眠測定機能を取り入れ、「無自覚の覚醒に気づいてもらえるようにした」とのこと。

資生堂が以前行なった調査でも、95%の女性が「肌の変化を毎日実感している」と回答したそうですが、私も含めて「ではなぜ、毎日肌の状況が違うのか?」を突き詰めて考える機会は少ないでしょう。おそらく、「季節や気候、生理の前後(ホルモンバランスの乱れ)、あるいは睡眠時間が、お肌と関係しているのかな?」と、ただ漠然と考えているぐらい。

だからこそ、オプチューンを通じて、一人ひとりの肌状態に合ったスキンケア(保湿液)を提供するとともに、細やかなメッセージ、すなわち「あなたはいま生理前だから、肌が揺らぎやすい時期ですよ」や、「睡眠のリズムが乱れてあまり眠れていないようなので、こういう効果があるスキンケア(保湿液)を多めに配合しています」などを(アプリ上から)伝えるようにしているそうです。

スマホの肌スキャンで毛穴の状態も測定

私も取材に伺った際、弊社のスタッフとともに、実際に使ってみました。

まずはオプチューンの専用アプリを立ち上げ、「肌スキャン機能」のボタンを押してスマホのカメラで、頬の写真を撮る。この段階で、肌のキメや水分量、皮脂や毛穴の状態まで、細かく測定できます。

専用アプリの「肌スキャン機能」を立ち上げ、頬の写真を撮ると……(左)現在の肌の状態が表示される(右)

これと並行して、アプリ上には気温や湿度などの「環境データ」が、提携する外部企業を通じて毎日入ってきます。そこには季節に応じて、紫外線や花粉情報、さらにはPM2.5などのデータも含まれる、とのこと。

「そのほか、生理の周期や睡眠時間、さらにその日の“気分”などをユーザーさん自身に入力していただくことで、お一人おひとりに適したスキンケア(保湿液)の配合が決まります」と、近藤さん。

保湿液の配合パターンは8万種類以上

集まったデータは一旦、クラウド上にアップされますが……、クラウドが分析するスキンケア(保湿液)の配合パターンは、なんと約8万種にも及ぶ、とのこと。そこから最適なパターンが編み出され、「今日はスキンケアカートリッジのCとEを、それぞれこれぐらいの量で提供せよ」との指令が、マシンに送られるそうです。

手をかざすと調合されたスキンケア(保湿液)が自動的に出てくるしくみ

そして、マシンの下部に手を差し入れると……、あら不思議! スキンケア(保湿液)が自動的に調合されて出てきます。あとはそれを、手のひらで混ぜ合わせて肌につけるだけ。

このステップを2回行えば、お手入れは終了。朝晩これを繰り返すだけで、自分専用に日々パーソナライズされたお肌のケアが可能になるシステムです。

まさに、多忙な現代女性にとってはうれしい限り。近藤さんも、「肌のお手入れのプロセスが短縮されるという意味では、『時短』につながるでしょう」と言います。忙しくて、スキンケアアイテムを買いに行く時間さえない女性たちにも、残量に応じて自分に適したカートリッジが自宅に届くシステムは、それだけで魅力が大きいはずです。