舞台役者を目指していた学生時代
東京・代官山駅からほど近い一角に、落ち着いた佇まいの台湾カフェがある。タピオカミルクティー発祥の人気ブランド「春水堂」の海外1号店として、2013年にオープン。香り高いお茶ドリンクとスイーツで“台湾スイーツ・ブーム”の先駆けとなった。
朝10時、開店前に訪ねると、今年4月から広報を担う工藤芽生さん(36歳)が笑顔で迎えてくれた。これまで玩具、アパレルなどさまざまな業界を経験してきた彼女にとって、30代半ばにチャレンジした異色の舞台だった。
「もともと人前で話すことや表現することが大好きで、舞台の役者を目指していました」
両親ともにテレビ業界で活躍し、父親はキャスター、母親は元・女子アナウンサーという家庭に育った工藤さん。なるほど、その血筋はしっかり受け継がれたようだ。大学時代には奨学金を借りまくり、ロンドン大学へ留学。本格的に役者を志して芝居の勉強もするが、卒業を前に現実の厳しさに直面した。
「毎月の返済金額を見たら、ゾッとしちゃって、私には下積みの生活は無理だなと思ったんです。本当にやりたければたぶん幾つになっても挑戦できるだろうし、社会人としていろんな経験をしたうえで、最終的に役者を目指す楽しみもあるんじゃないかと」
ならば子どもに関わる仕事をしたいと、おもちゃの会社を思いつく。ロンドンではベビーシッターのアルバイトをしていたが、現地の家庭では日本のおもちゃが親しまれていた。帰国後に志望したのが大手玩具メーカーの「タカラトミー」。自分も幼い頃にリカちゃん人形などで遊んだ思い出があり、温かな社風にも惹かれた。