日本人より短い時間で1.5倍の価値を生むドイツ人

ドイツ国民たちがゆとりのある暮らしをしているからといって、経済が停滞しているわけではない。意外なことに、ドイツ人は短い労働時間で、日本人よりも多くの付加価値を生み出している。

OECDによると、2017年のドイツの国民1人あたりのGDPは、4万3892ドルで、日本(3万8202ドル)よりも14.9%多い。言い換えれば、日本人は毎年ドイツ人よりも354時間長く働いているのに、国民1人あたりのGDPは、ドイツよりも約13%少ないのだ。OECDが発表している国民1人あたりのGDPでは、ドイツは調査の対象となった36ヶ国の中で12位、日本は17位だ。日本の数字はOECDの平均よりも低くなっている。

日本とドイツの間の労働生産性にも大きな差が開いている。OECDは、毎年各国の労働生産性を比べた統計を発表している。ここで使われている労働生産性の定義は、労働者が1時間あたりに生み出す国内総生産(GDP)である。OECDによると、ドイツの2017年の労働生産性は69.7ドルで、日本(46.9ドル)に比べて48.6%も高い。

つまり彼らは我々よりも短く働いて、我々の1.5倍の価値を生んでいることになる。OECDのランキングに載っている36ヶ国のうち、ドイツは第6位。日本は第20位と大きく水をあけられている。日本の労働生産性は、OECD平均よりも低くなっている。

サービス業の生産性がとくに低い日本

ドイツの労働生産性が高い最大の理由は、労働時間の短さにある。GDPでは世界第3位の日本の労働生産性が低いのは、長い労働時間のせいだ。

もちろん労働生産性は、業種ごとに異なる。たとえば日本の機械製造業界、特に自動車産業の労働生産性は、ドイツよりもはるかに高いといわれている。しかし、日本のサービス業の労働生産性はドイツよりも大幅に低い。OECDの統計には製造業からサービス業まであらゆる業種が含まれている。日本では、自動車など一部の業種で労働生産性が高いのに、サービス業の労働生産性が低いので、全体としてはドイツに水をあけられているのだ。

ドイツ人よりも長く働いているのに、一人ひとりが1時間働くことで生む価値は低い。これは我々日本人の働き方に、ドイツよりも非効率な部分があることを物語っている。

現在世界中の企業にとっては、労働生産性の改善が重要な課題になっている。日本も例外ではない。機関投資家も、投資先を選ぶ際に労働生産性が高い企業に注目する傾向がある。つまり、労働生産性が低い企業には、投資家からの資金が集まらなくなる可能性もある。日本の全ての経営者にとって、労働生産性の改善は重要なテーマである。